Sun Microsystemsと富士通が2004年に提携を結んだのは、『SPARC』シリーズのプロセッサを盛り返させようとの意図からだった。2007年4月、両社はその提携から生まれた最初のサーバ製品「SPARC Enterprise Server」を発表しようとしている。
SPARC Enterprise Serverの全体的な設計は、両社が共同で行ったが、プロセッサには富士通のデュアルコア「SPARC64 VI」(開発コード名「Olympus」)を搭載し、OSとしてSunの「Solaris」を採用している。最小システムの「M4000」は4プロセッサ構成で価格は5万ドル台からだが、最上位の「M9000」システムは64基のプロセッサを搭載し、価格も数百万ドルになる。
Sunと富士通が提携した当時、Sunはドットコムバブル崩壊後に失った人気を回復できないままで、SPARCプロセッサは不遇の時代にあった。競合他社はというと、Sunの衰退を横目に、IBMのプロセッサ「Power」がハイエンドサーバ分野でシェアを獲得しつつあり、Intelの「Xeon」やAdvanced Micro Devices(AMD)の「Opteron」などのx86系プロセッサは、ローエンド市場を強固な足場として成長を続けていた。
そこでSunは、「UltraSPARC」製品には思い切った刷新が必要との結論に至った。同社は「UltraSPARC V」の開発を中止し、従来の設計に代えて、Sunが2002年に買収したAfara Websystemsから獲得した技術である、1つのプロセッサにコアと呼ばれるプロセッシングエンジンを多数詰めこむ設計を採用した。しかし、SPARCには確実な将来性の保証が必要であり、富士通のデュアルスレッド処理型デュアルコアSPARC64 VIプロセッサOlympusはこの目的に申し分なかった。両社は共同設計のサーバの開発に取り組み、当初「Advanced Product Line」(APL)という開発コード名で呼ばれていたこの新製品は、その後SPARC Enterprise Serverと改称された。
2004年当時には差し迫っていた状況もその後、一部は切実さがやわらいだ。Afaraから取り入れた技術の最初の成果である「UltraSPARC T1」(開発コード名「Niagara」)が、そこそこ成功を収めたからだ。Niagaraと同じアーキテクチャを採用したハイエンド向け次期プロセッサ「Rock」(開発コード名)も、2008年後半に出荷開始の予定だ。さらに、従来の「UltraSPARC IV+」を搭載したサーバの需要もSunの予測をかなり上回っている。
調査会社IlluminataのアナリストGordon Haff氏は、次のように述べている。「UltraSPARC VI+の人気がこれほど持続せず、APLの登場がもっと早く、さらにRockの出荷予定が今よりも遅れていれば、SunにとってAPLの重要性はもっと高かっただろう。現状では、膨大な資金と努力なしに入手できた魅力的な新製品という位置づけだ」
この新システムは、ニューヨークで米国時間4月17日に、Sunのエグゼクティブバイスプレジデントを務めるJohn Fowler氏と、富士通の代表取締役副社長である伊藤千秋氏によって発表される。2004年に公表した最初の計画では、2006年半ばに新製品を出荷開始となっていたが、それは2007年にずれ込んだ。Sunは2月、2007年前半に出荷する予定だと発表していた。