人間界では節操のない関係に見えるが、コンピュータの世界ではサバサバしている方が管理しやすい。この方式にはオプションとして、ポインターコピーだけ行って実データをコピーしないというやり方ができる場合もある。これはつまり、さばけた偽装結婚型ともいえる。結婚式だけ挙げて新婚旅行にも行かず、式場を出た時点でキッパリ離婚するという雰囲気であろうか。
偽装離婚型
偽装離婚型は恋に落ち、結婚式を挙げ、2人で努力を重ね、愛を育んでいるが、事情によって別れたことにするというやり方である。他の方式は日常1人で生活しているもの同士でペアを組むのだが、この方式はその逆で、日常は一緒に行動し、必要な時だけ別れるというやり方だ。
仕組みとしては、コピー元とコピー先を事前にミラーしておき、コピーが必要となった時点で2人が別れることになる。別れた後はそれぞれを別々に使用できるようになる。しかし、そのまま別れたきりでは次にコピーが必要な時にコピーを得ることはできない。そこで、頃合いを見計らって復縁し、元のさやに戻すのである。このやり方は、コピーを得るために離婚と再婚を毎日のように繰り返すようなものだ。
元のさやではなく、他の相手と再婚してもよさそうに思えるかもしれないが、別れている間にお互いの内容が全部違ってしまっている訳ではないので、元のさやの方が内容を同期する時間が早い。故にこの方式では自由恋愛が許されていないケースがほとんどだ。最初に仲人が決めた相手と離婚や再婚を繰り返していく悲しい運命を背負わされているため、他の方式と比べて用意する容量が増え、コストが高くなってしまう傾向がある。
妄想と現実の間で
同じ筐体内に居合わせたのも何かの縁で、ディスク同士が仲人役のシステム管理者の取り持ちで高速コピー機能のペアを組んだものの、彼らは自由恋愛や偽装結婚、はたまた偽装離婚といったように数奇な運命をたどることになる。方式はいろいろあるが、相手を取っかえ引っかえして結ばれたり別れたり出来るのも高速コピー機能の面白いところである。
格式張った社会通念や世間体を気にしてしまう常識人間の私には、到底出来ない芸当だ。自由恋愛型なんて聞くと、妄想の世界に浸って多少うらやましい気もするが、現実の世界に生きる私としては、1人の相手と添い遂げたいと心から願っている。ということでここは丸く収めたい。
第10回筆者紹介縁は異なもの味なもの
高井 泰生 (たかい たいせい)
日本IBM テクニカルセールスサポート フィールドテクニカルサポート 主任 ITスペシャリスト
職務:ストレージ製品のテクニカルセールスサポート
一言:今回、縁あってコラムを書くことになりました。ストレージ製品は日々増加するお客様のデータを蓄積するために必要不可欠なものです。必ずどこかで触れているはずのストレージ製品ですが、ディスク、テープ、仮想化装置等それぞれ特性の異なる製品であるため、このコラム集を読んでみると意外と知らなかったことがあると思います。このコラム集をきっかけに、よりストレージに親しみを感じてもらえたら嬉しいです。