白書作成で市場規模の予測を
次に、OSSセンター主査の荒谷浩二氏、日本総合研究所の宇賀村泰弘氏から「我が国のOSS活用IT市場の現状と将来展望に関する調査」の中間報告が行われた。
これまでもOSSの活用状況については、単発的な調査が民間で行われていた。導入状況の把握が困難であることに加え、普及阻害要因や潜在的ニーズ、中長期的市場予測など客観的データが不足しているといった課題を積み残していると荒谷氏は言う。
さらに一部の成功事例、あるいは失敗事例が取り上げられることでOSSに対する偏見が生じており、これがOSS導入やOSS事業への転換に対する弊害になっているのではないかという。
IPAではこれを受けてアンケートを実施し、市場予測を含めた分析を盛り込んだ白書を継続的に発行することとした。今回はその第1回目となる。
アンケートの対象となるのは全国の情報サービス企業(SIer)約2950社で、大都市圏が82パーセントを占める。内容は対象企業内でのOSS活用状況と体制、ビジネスにおけるOSSの活用状況、阻害要因(特に人材)、ユーザー企業の評価、中小・地方企業におけるOSSの活用と必要な施策などである。市場規模の算出については各SIerにおいてOSSにどれだけの工数をかけたか、その人件費をベースに算出する。
この白書発行の波及効果として、OSSの普及について多くのSIerが概況をつかむことができ、その普及が促進されることによって市場の拡大と低コストなITシステムが実現すること、中小・地方のSIerも下請け構造から脱却、自立できるようになるといった仮説を立てている。
宇賀村氏は、開発受託そのものがビジネスだった旧来の環境から付加価値がビジネスになるというビジネスモデルの変化が起こるだろうと語る。こうした環境下では高い付加価値を生み出す人材、そして将来のデファクトとなる技術を見抜く「目利き」の人材がカギを握るであろうと述べた。