「Web 2.0では、ユーザーがプラットフォームを意識することなくマッシュアップされたサービスを利用している。これがエンタープライズの世界でも浸透しつつある。Business Objectsの提唱するBI 2.0では、データがどこにあろうとも、どんな種類であろうとも、IT管理者がいなくとも、ユーザーが自ら必要な情報を探し出し、活用できるようになる。そういった次世代のBI環境をを提供できるのは、わが社だけだ」。Business ObjectsのCEO、John Schwarz氏は5月11日、都内にて「BI 2.0」をテーマにした記者説明会を開催し、このように述べた。
Schwarz氏によると、Business ObjectsはBI 2.0で5つの革命を起こそうとしているという。それは、ネットワーク革命、ユーザー革命、コミュニティ革命、アプリケーション革命、プラットフォーム革命だ。
ネットワーク革命とは、社内の構造データのみならず、顧客やパートナーなど外部のデータにもアクセスして活用できるようにすること。Schwarz氏は、米国の医療機器ディストリビューターであるOwens & MinorがBusiness Objectsのツールを活用し、同じグループ内の病院が異なるメーカーにそれぞれゴム手袋を発注するなどといった非効率性を排除した例を紹介した。
ユーザー革命とは、BIが誰でも使えるものになるということ。例えばフランスのDisneyland Parisでは、各アトラクションの負荷と利益を予測し、店舗スタッフに携帯電話でアラート通知し移動を促している。このように、「一般の従業員でもBIを活用することで、顧客満足度の向上に貢献できる」とSchwarz氏は述べている。
コミュニティ革命とは、ユーザー同士が協調して情報共有し、相互に役立てるようにすること。Schwarz氏は、米国のオーガニック農場協同組合Organic Valleyが多数の農場と契約し、飼料の種類や牛の品種と牛乳の生産量を調べたデータなどを分析、ベストプラクティスをすべての人に公開している例を紹介した。
アプリケーション革命とは、トランザクションベースのアプリケーションから情報中心のアプリケーションへとシフトしていくことだ。データは、データベースはもちろん、表計算シートやその他のさまざまなアプリケーションで作られているが、「どれも全体像が見えない」とSchwarz氏は指摘する。同氏は、これらの多様なデータをうまく統合し、可視化することで、従来のERPやCRM以上の威力を発揮するとしている。
プラットフォーム革命とは、ユーザーや部署単位で個別に隔離されている情報を、アプリケーションを変更することなしに統合し、さまざまな情報にアクセスできるようにすること。Schwarz氏はその例として、情報資産の保管や管理を行うIron Mountainを挙げる。同社は、映画会社や音楽会社などのデータを、紙や写真、録音テープ、DVDなどの形式で保管しているが、 「Business Objectsのツールを活用することで、あらゆるデータを瞬時に探し出している」と話す。
Schwarz氏は、「こうした包括的なBIソリューションが提供できるのはBusiness Objectsだけだ。現時点で他社はまだBI 2.0に踏み込んではいない」として、同社がBIの世界で優位に立っていると主張する。「BIは、今後のアプリケーション投資の中心となっていくだろう」と同氏は述べ、「市場規模は200億ドル」としている。
ただし、日本におけるBIの採用が若干遅れていることは同氏も認めている。その理由としてSchwarz氏は、JSOXをはじめとするコンプライアンス対応などにリソースが割かれているため、他の分野が遅れがちになっていること、そしてBIは通常ERPなどが実装されてから導入することが多いが、ERPの実装そのものがまだ日本で浸透しきっていないことなどを挙げる。
しかしSchwarz氏は、「こうした理由は一時的なものに過ぎない。日本もグローバルな環境に対応するにつれ、BIの導入も加速するだろう」と述べた。