NECは5月16日、地球温暖化や化学物質汚染、資源枯渇や廃棄物処理など、企業に求められている地球環境問題に対応するための取り組みを体系化することで同社の環境ソリューション事業を強化し、NECグループ全体として推進していくことを発表した。
今回発表された環境ソリューション事業の強化では、「ITを高度に活用した環境ソリューションの強化/拡充」「先進的環境経営に役立つ研究開発の推進」「2007年4月よりグループ8社を含めた120名規模の専任体制を実現」の3つのポイントが強化される。
まず、ITを高度に活用した環境ソリューションの強化/拡充では、現在すでに提供されている環境ソリューション36製品に新製品を投入することで、2010年には60製品まで拡張する計画。その第1弾として同日、「REACH、RoHS、ELVに対応した化学物質管理ソリューション」および「情報システムの環境負荷評価/分析サービス」の2種類の環境ソリューションが発表されている。
REACH、RoHS、ELVに対応した化学物質管理ソリューションは、部品、完成品にかかわらず、製品を校正する材料に含まれる化学物質の情報を集中的に管理し、取引先の要求や輸出先の規制に柔軟に対応するためのソリューション。REACH規則やRoHS指令、ELV指令など、欧州やアジア地域の主要な化学物質規制に準拠し、すでに提供されている関連ソリューションと連携することで、サプライチェーン全体をサポートする。
同ソリューションの基本機能は、導入時のコンサルティングから運用サポートまで含めたワンストップサービスとして提供される。受注の開始は2007年6月を予定。価格は300万円より。今後3年で200本の販売を見込んでいる。なお、中小企業向けにはASPモデルでの提供も計画されている。
また、情報システム環境負荷評価/分析サービスは、サービスやソフトウェア、ソリューションの導入に伴う環境負荷削減効果を定量的に把握するサービス。LCAサポートサービスをベースに、同社が開発したICT向けLCAサポートサービスを提供する。サービスは、日本電気ファクトリエンジニアリングより提供される。価格は50万円より。
これらNECグループが提供する環境ソリューションは、環境業務の視点により体系化された4つのグループに基づいて開発されている。4つのグループの概要は、次のとおり。
- ITで考える(Management)環境開発管理:ISO14001対応から環境コンプライアンス、教育、環境会計環境コミュニケーションまで、企業の環境経営をサポート。
- ITで識る(Monitoring)環境パフォーマンス管理:環境負荷データを最適なタイミングで収集、集計することで、環境パフォーマンス化の“見える化”を支援。
- ITで律する(Minimization)環境負荷低減活動:設計/開発から調達、生産、販売、物流、廃棄、回収/リサイクルまで、ライフサイクルの環境負荷軽減を支援。
- ITで療す(Maintenance)環境保全・修復活動:オフィスや生産施設の環境負荷、汚染物質の影響範囲特定などを調査し、その処理システムを総合的にサポート。
また、先進的環境経営に役立つ研究開発の推進では、PCの消費電力を自動的に管理するシステムを、国立環境研究所および東京大学 先端科学技術研究センターと協働で開発している。研究開発システム名称「INEMS」と呼ばれている同システムは、環境省地球温暖化対策技術開発事業の一環として行われているもの。INEMSでは、最大40%の省エネを目指しており、PCはもちろん、プリンタをはじめとする周辺機器なども対象に、2年後の実用化を目指している。
NECの執行役員常務、岩波利光氏は、「2005年に京都議定書が発効されて以降、地球温暖化に対する企業や自治体の取り組みが大きく注目されている。また、環境汚染の原因となる化学物質の規制強化も世界的に実施されるようになってきた。リサイクルをはじめとした資源の有効利用の進展なども含め、グローバルに事業を展開する企業にとって環境経営はますます重要になる。NECの環境ソリューションは、こうした企業の課題を解消するために、さまざまなソリューションを提供する」と話している。
NECでは、4つのグループで各環境ソリューションを強化することで、2010年までに対象製品を60種に拡充し、環境ソリューション事業全体で200億円の売り上げを目指している。