デファクトスタンダードからオープンスタンダードへ、OSSの世界を広げるのは“人材”だ--日本IBM

宍戸周夫(テラメディア)

2007-05-21 08:00

一貫したスタンダードへの取り組み

 OSSの本質は、ソースコードが公開されていることよりも、それ自体が「オープンなスタンダードである」という点にあるとするならば、IBMの取り組みは首尾一貫していると言えるだろう。

 IBMは、コンピュータ界の巨人として、1964年に発表した「System/360」の時代から常にスタンダードを目指してきた。このメインフレームをひとつの“手本”と見たプラグコンパチブルメーカーが、日本のコンピュータ市場を作り出した。

 1981年に世に出た「The IBM PC」はインテルのCPUとマイクロソフトのOSを搭載。当時まだメーカー間で互換性がなかったパソコンの世界に、世界標準となるアーキテクチャを打ち立てた。

 「つまり、IBMの基本的な姿勢は昔からまったく変わっていないのです。System/360やIBM PCアーキテクチャ以外にも、開発環境であるEclipse、そして半導体のPowerアーキテクチャなど、積極的にスタンダードへ取り組んできました」

 これは、日本IBMで当初からOSSをリードしてきた、Linux&OSSエバンジェリストである中原道紀氏の言葉だ。

 しかし、それらはデファクトスタンダードにはなったかもしれないが、真のオープンスタンダードではなかった。IBMの歴史を見ると、System/360やIBM PC以外にもSAA(System Application Architecture)、SNA(Systems Network Architecture)、マイクロチャネル、トークンリングなどさまざまなアーキテクチャや技術を提案してきている。いずれもが先端的な取り組みである。しかし、これらはオープンではなかったために、結局デファクトにはなれなかった。そして、この「巨人」にも陰りが見え始める。

きっかけはインターネットとGerstner

 そのIBMの窮地に登場したのが、1993年に新しい舵取り役として、会長兼CEOに就任したLouis Gerstnerである。そして、その時代背景にはインターネットの台頭があった。

 「企業が1社でできることに限界が見えてきた中で、インターネットが登場し、TCP/IPでみんながつながるという世界が出現しました。状況が劇的に変わってきたのです。そこで、このインターネットがもたらすインパクトを改めて考えるために、1990年代はじめにIBMのチーフテクノロジストであるIrving Wladawsky-Bergerが『Internet Evolution(インターネットの進化)』というチャートを示しました」(中原氏)

 ここには、TCP/IPでみんながつながり、Eメールでコミュニケーションの輪が広がり、情報がウェブで拡散し、先進的なコンピューティングの形としてグリッドが登場し、e-Business、そして現在の「On Demand Business」の世界が開花するという道筋が明確に示されていた。LinuxやSOAP、HTMLがオープンスタンダードとなることも描かれている。

 「1993年にCEOに就任したGerstnerは、このアイデアを外部に向かって積極的にアピールしました。あちらこちらの講演でこのチャートを使い『インターネットの世界が来る、e-Businessの世界が来る』と訴えたのです」(中原氏)

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