デファクトスタンダードからオープンスタンダードへ、OSSの世界を広げるのは“人材”だ--日本IBM - (page 2)

宍戸周夫(テラメディア)

2007-05-21 08:00

オープンな世界でIBMが勝ち残るための方策

 Gerstnerは1990年代はじめに、このオープンムーブメントという潮流をいち早く察知した。そして、オープン化によって、世界がどのように変化するかを他社に先駆けて考え始めた。

 それについて中原氏は、ハーバード・ビジネス・スクールのMichael E Porter教授が考案した「Five Forces Analysis」という図を引きつつ、こう説明する。

 「オープンの議論は経済原理で語ることができます。オープンによってドミナント、つまりそれまで支配的だったプレイヤーの戦略は変わらなければなりません。従来は、IT市場において、売り手が買い手に対して力を持ち、買い手をロックインしていたのです。しかし、オープン化、スタンダード化、ITのコモディティ化という流れの中で代替品が数多く出てきて、売り手が買い手をロックインすることができなくなりました」

 コンピューティング市場も、従来は市場のドミナント、端的にいえばIBMのアーキテクチャ上で、他社は製品を作っていた。System/360やIBM PCの互換路線を歩んでいればよかった。しかしオープンスタンダードの世界ではドミナントの支配権が弱まり、市場では多くの企業によってスタンダードの奪い合いが進む。

 Gerstnerは、こうしたオープンムーブメントに対し、IBMがどのように取り組むべきなのかを考えたという。

 「インターネットによって世界中がボーダレスになり、24時間365日止まらずに、いろいろな情報が走り出したわけです。オープンスタンダードによってみんながつながるようになり、業務のやり方も変わります。その中で、IBMの独自性をどう打ち出し、バランスを取るかについて、真剣に考えたのです」(中原氏)

キーワードは「テクノロジ」と「人」

 そこでIBMが打ち出したのが「最先端テクノロジ」と「人材」というキーワードだった。インターネットがもたらしたオープン化によって、創業間もないベンチャー企業でも、この世界に参入できるようになった。こうしたムーブメントの中で勝ち残るためには、常に技術的な優位性を保つ必要がある。そこでIBMの強みを発揮するには、まずテクノロジの先進性が求められる。

 「そこでわれわれは今、Deep ComputingやCell、Power、そしてオンデマンドへの対応などを打ち出しているわけです。現在、IBMは約170のオープンソースのプロジェクトに参加し、IBMのグローバルな組織であるLinux Technology Centerには約600人の人材を抱えています。われわれはオープンスタンダードにコミットし、尊重しています。そしてオープンな場で議論し、オープンな世界にお客様を導いていると自負しています」(中原氏)

 加えて、IBMがオープンムーブメントの中で優位性を保つために必要な「人材」についても、十分な取り組みをしているという。

 現在の日本のOSS市場に対し、中原氏は「UNIXのエリアに関しては、OSSであるLinuxがその代替品としての位置づけをほぼ確立してきているというのが現状。しかし、それをアプリケーションサーバやDBサーバに広げていけるかどうかは今後の課題」と見ている。

 アプリケーションやDBのエリアでは、まだ十分な「信頼性」「可用性」を認識されるようなレベルに至っていないという見方だ。そして、そこでポイントになるのが「人材」だという。

 「OSSによってお客様はベンダーロックインから解放され、買い手がより力を持つようになります。従来は商用しか選択肢がありませんでしたが、OSSという選択肢も選べるようになったわけです。しかしそこで問題になるのは、こうしたオープンな環境が使えるかどうかという本質的な問題です。本来であればOSSのメリットを享受するのは中小企業のお客様だと思うのですが、そうなるためには、人が育つかどうかがカギだと思っています」(中原氏)

 中原氏は現在、日本OSS推進フォーラムの人材育成部会の部会長およびIPA OSSセンターにおける同議論をリードしている。OSSの中に含まれているオープンスタンダードのコンポーネントをうまく使っていくためには、「使い手の力量」が重要であるという議論は、そこでも進められている。

 そこでの議論を踏まえつつ、中原氏は人材の問題について、端的にこう表現する。

 「今、私が推進フォーラムで携わっている人材育成でいえば、UNIXが分かり、C言語が読め、英語ができるという、この3つだけが必要なのです。しかし残念ながら、この3つを兼ね備えた人材は、日本の業界には多くないのです。その点では、中国や韓国のほうが進んでいます」

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