Linux技術者認定試験を通じ、日本に「OS教育」を広める--LPI-Japan - (page 2)

宍戸周夫(テラメディア)

2007-05-28 08:00

「OSを知らない技術者は生き残れない」

 日本において、LPICの認定技術者は確かに多い。とはいえ、手放しで喜んでばかりはいられない事情もあるようだ。

 成井氏は「LPICの認定技術者は日本が一番です。しかし中国やインドには実際にLinuxを使っている技術者が多くいます。また、現在ウェブサーバは50%以上がLinux系であり、そこから類推すると相当の技術者が米国にもいることは間違いありません。Googleのサーバも全部Linuxですから……」と語る。

 「認定技術者の数が圧倒的」といっても、それだけで日本のコンピュータ産業の前途を楽観的に見ることはできない。その点では、成井氏も現状を厳しく見ている。

 「今のコンピュータ業界は、チップはインテルとAMD、OSはLinuxかWindows、UNIXという具合で、どこのコンピュータ会社も、サービスビジネスがメインになっています。そうすると、どのくらい“売れる技術者”を抱えているかがポイントになります。 Linuxが分かり、WindowsやUNIXとのインテグレーションができ、またデータベースでも商用のものだけでなく、OSSの製品も分かる技術者が必要になるわけです」(成井氏)

 特にこれからは、OSSが分からなければ、IT技術者として市場価値すら消滅するのでないかというのが同氏の見方である。

 「Linuxが分からなければ、アプリケーションレベルのことしか理解できないわけです。しかし、OSを本当に理解できていれば、アプリケーションをチューニングすることもできる。たとえば、外部で何か異常が発生した場合にOSに割り込みが入るようなシステムがあります。特にプロセスコントロール系では、それにシステム自体が迅速に対応できなければなりません。そうでなければ、プラントなどでは大きな事故につながる恐れもあります。こういうシステムを実現するためには、OS内部の知識が必須です」(成井氏)

 OSの動きを知らなければ、それぞれの用途に特化してチューンアップされたアプリケーションは開発できない。逆に、OSの中身を理解していれば、商用OSに作りつけられた機能以上のことがで実現できる。これから、IT技術者として技術力を武器に生きていこうとするなら、Linuxのようにソースが公開されているOSの知識が必要という指摘だ。

無償の上に無限の可能性がある

 「LPI-Japanはマクロ的に言うと、認定試験というものを通じて、日本でOSの教育を広めているのです」という成井氏の言葉が、LPI-Japanのこの7年の取り組みを端的に表現している。

 こうした取り組みによって、教育機関もLPIC向けのカリキュラムを取り入れるようになってきた。現在、LPI-Japanは28団体37拠点の教育機関と連携し、「LPI-Japanアカデミック認定校」という制度を実施している。ここで、Linux講座を設け、また講師に対しても、登録制のインストラクターコミュニティを設けている。

 「大上段にいえば」という断りをつけながらも「日本のITのレベルを少しでも上げることができればと思っています」と成井氏は言う。

 そして、OSSの技術者に対しては、さらに積極的な「情報発信」をするよう訴える。

 「OSSには世界中の人が貢献しています。そこでは、技術者は自ら情報発信しなければなりません。オープンソースの世界ですから、自ら積極的にあらゆるコミュニティや組織に首を突っ込むことが必要です。そして、Googleのように Linuxの上で新しいビジネスモデルを作り上げてもらいたいと思っています。Googleは無料の世界の上に有料のビジネスを作り、そこに大きな市場が出現しました。Linuxも同じです。Linuxの世界では豊富なリソースを無償で得られますが、そこに無限の可能性があります。無償のリソースの上にどのようなビジネスモデルを構築していくか。その手腕は、技術者にも求められているのです」(成井氏)

成井弦氏 これからの技術者には、「OSの知識」「情報発信のスキル」「ビジネスセンス」が重要になると語る、LPI-Japan理事長の成井弦氏。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

  5. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]