多くのベンダーが、VoIP導入前の基礎評価としてネットワーク上で音声トラフィックをシミュレートし、ネットワークをテストする製品やサービスを提供している。こういった製品やサービスは、VoIPを展開する前に対処しておくべき問題が存在しているかどうかを見極めるのに役立つ。以下に代表的なものを3つ挙げる*(*編集部注:日本国内では、ネットワークインテグレーションサービス事業者などが提供するシミュレーションサービスをVoIP導入前に利用するのが一般的である。また、国内で優勢なシミュレーション用製品は下記のほかに存在するため、詳しくはVoIP移行時にインテグレータと協議のうえ検討してほしい)。
- PROGNOSIS
- Viola Networks NetAlly LifeCycle Manager
- VoIP Supply VoIP Network Assessment
こういった評価によって、会社のネットワークがVoIPの導入に耐えられるかどうか、いくつかの主要コンポーネントを変更する必要性があるかどうかなどを知ることができる。また、場合によっては、VoIPを展開するためにネットワークを根本から再設計する必要があると分かることもある。
ネットワークがVoIPに必要な追加の帯域幅(電話を多用する従業員が数多くいる大企業の場合にはかなりの量になる)を扱えるかどうかを決定するにあたっては、ネットワークがQoS(Quality of Service)をサポートしていることを確かめておく必要がある。会社のネットワークにあるルータやスイッチはVoIP互換だろうか?QoSを効果的に利用するためにはネットワーク機器のソフトウェアをアップデートする必要があるだろうか?
ユーザーは電話サービスの中断や問題発生を、データネットワークのダウンほどには大目に見てくれないということを覚えていてほしい。公衆交換電話網(PSTN)に慣れたユーザーは、電話システムに対してほぼ100%の信頼性を期待するものなのだ。
ネットワークのコンバージェンスを行うことで、音声通信とデータ通信を1つのものとして管理することが可能になる。また、コンバージェンスを適切に行えば、機器コストや要員コストも削減できる。さらに、ユニファイドコミュニケーションの実現が容易になるため、ユーザーは電子メールやボイスメール、ファクスなどを含むすべてのタイプのメッセージに、単一のリポジトリから単一インターフェースを通じてアクセスできるようになる。既存の機器を音声とデータの双方に利用することで、投資に対してより大きな効果を得られるだけではなく、維持や管理が必要な機器の台数を抑制することも可能だ。
ネットワークは分けておくべきなのか
もう1つの選択肢は、VoIPコンポーネント専用のネットワークを別途用意することである。これには、物理的に完全に異なるネットワークを構築する以外に、仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)テクノロジを用いてネットワークを論理的に分離するという方法がある。
ネットワークを分けておく最大の理由はセキュリティだ。VoIPネットワークは、データネットワークと同じ基盤上にあるので、データネットワークに対する攻撃や侵入、セキュリティ上の脅威の多くに対してぜい弱である。VoIPとデータトラフィックを同じネットワーク上にまとめると、いずれか一方に対する攻撃でもう一方もダウンしてしまう可能性がある。
ネットワークがウイルスやDoS(Denial-of-Service)攻撃によってダウンすることで電子メールが利用できなくなっただけでも、ユーザーはうっとうしく思うものだ。しかし、電子メール「および」電話が使えなくなった場合、ビジネスは停止してしまい、企業は損失を被ることになってしまう。