日本オラクルは18日、「Oracle WebCenter」を発表した。「オラクルが久しぶりにリリースする(バージョンアップでない)本当の新製品」(同社常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏)であり、Fusion MiddlewareにWeb 2.0の概念を取り入れ、ユーザーインタラクションを向上させるものとなる。
WebCenterは2006年10月のOracle OpenWorldでエンタープライズマッシュアップというキーワードとともに紹介されたもの。オラクルの考えるマッシュアップとは「企業内外の複数のアプリケーションをひとつのアプリケーションとして再構築する」ということ。
Web 2.0やマッシュアップはエンタープライズ市場でも注目を集めている。こうしたなか、同社では、社外の一般公開されたWebサイトだけでなく企業内のアプリケーションへも接続が可能なことと、プロプライエタリなテクノロジ、APIを公開しないアプリケーションへもサポートすることを差別化要因として挙げる。これらは同社のSOA Suiteなどを活用し、既存のアプリケーションをWebサービス化することで可能とする。
同社がエンタープライズマッシュアップの効果としてあげるのは、インタフェース改善によるサービスの向上と短期間/低コスト開発によるコスト構造の変化だ。前者はすでにコンシューマ市場でよく認識されている特徴だ。後者に関しても、「はてなマップ」が1週間で製作された例などは有名だ。
コストの問題は特にエンタープライズ市場で有効だろう。三澤氏はERPのカスタマイズを例に挙げて説明する。同氏によれば、現状のカスタマイズの多くがユーザーインターフェースやインタラクションの改善によるものだという。これまでのアプリケーション構造ではインターフェースとビジネスロジックが切り離されていないため、インターフェースの変更がロジックにまで及んでしまいコストがふくらんでいた。
WebCenterはインターフェースを部品化し、マッシュアップする。これにより、ロジックへ影響を及ぼすことなく、インターフェースを改善し、ほかのサービスと組み合わせることができる。三澤氏はこの特性によって、特に国内で頻繁に行われるERPカスタマイズやカスタムアプリケーションの製作が低コスト化、もしくは低減するのではないか、という見方を示す。
同社はこれまでインフラストラクチャーとアプリケーションの切り離しをGridで行い、切り離されたアプリケーション間の連携をSOAによって行うという取り組みを行ってきた。WebCenterによってこれがインターフェースの部分まで拡張されることになる。バックエンドはSOA、インターフェースはWebCenterでシステム間連携をとるという構想だ。
WebCenterの国内出荷は19日より。まずはLinux x86とMicrosoft Windows(32-bit)を対象に行い、SolarisやHP-UXなどに関しては7月3日より開始する。価格はNamed User Plusライセンスでで125,000円、Processorライセンスで6,250,000円。
販売目標については、マッシュアップという言葉自体、まだ目新しく、言葉が先行している技術であることもあり、30件と控えめ。まずはアーリーアダプターを対象に導入を進め、市場に対して実際にどういうことが可能かという姿を見せたいという。
スロースタートかもしれないが、WebCenterの導入にはApplication Server Enterprise Editionの導入が必須、かつ、既存アプリケーションのサービス化やBPELによるプロセス連携のためにSOA Suiteなどの導入も見込めるなど、大規模案件が見込める。また、数年後にはマッシュアップアプリケーションが当たり前になっている可能性もある。ユーザにとってはもちろん、オラクルにとっても大きな意味を持ち得るWebCenterに注目したい。