カネ、ヒト、時間いらずのIT内部統制--第6章:「監査」のために(準備編)

木村尚義 2007年06月25日 16時51分

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 私が子どものころ、近所には、知っている大人ばかりだった。周囲の大人は、子どもが悪いことをしていないかどうか、常に見守って(見張って?)いた。親同士は八百屋の店先などで常に情報交換をしていた。

 だから、子どもがいたずらをして、それを隠そうとしても、親からすれば、すべてお見通しだったわけだ。それにしても、最近、近所には知らない大人が多くなった。地域の子どもたちを見守っていた大人たちの役割は、監視カメラや携帯電話が果たすようになった。

監査されると安心する?

 ビジネスの現場もずいぶんと変化した。パソコンひとつとっても1990年代前半までは、1人1台なんてもってのほか。パソコンが使えない環境が普通だった。

 ゆえに、何をやるにしても、それには複数の従業員が関わっていた。そして、だれが何をやっているのかや、仕事の中身が今よりもよく見えたように思う。

 電話の回線も少なかったから取り次ぎが普通で、誰から誰への電話があったかはすぐにわかった。それにオフィスで私用電話すればすぐにばれた。

 実はこうした環境は、サボるほうにとっても都合が良かった。携帯電話など普及していなかったから、営業の合間の息抜きの最中にポケベルが鳴っても公衆電話が近くになかったというイイワケができた。まったく、持ちつ持たれつである。

 終身雇用が守られていた時代だから、転職もままならなかったし、会社を退職してしまうことのリスクはことのほか大きかった。そのため、会社は従業員が会社をやめるということは考慮にいれず、1人の担当者に仕事を任せっきりということも珍しくなかった。従業員も、そうそうリストラに遭うことを心配する必要がなく、習熟したらベテランとして安心して新人に仕事を引き継いでいた。

 会社と従業員が、良い意味でも悪い意味でもお互いを信じて仕事をしていた。20世紀の後半はそんな時代だった。

 ところが、現在のように「リストラ」が普通となり、転職にも抵抗が無くなると、入れ替わり立ち替わり担当者が変わることも多くなった。前任者の仕事の引き継ぎが不十分のまま、次の担当者に渡される。すると、仕事に習熟するどころか、今まで守られていたルールでさえも、いつの間にか、おろそかになってしまう。仕事全体を監督する責任を持つ社長ですら、ずっと今の会社に居続けるとは限らない。

 もはや、「監査」は「人を信じる」というレベルの話ではなく、仕事のプロセスが守られているかどうかを継続したシステムとしてチェックし続けることが、その重要な目的となっている。

 「監査」というと日本では、「人を信じる、信じない」という話になってしまいがちだ。監査という言葉から連想されるのは、多くの場合、監査する側とされる側の相互不信といったイメージである。

 ITシステムの利活用において「監査」をマイナスイメージで捉える必要はない。例えば、万が一、社内で不正が起きた場合に、監査記録は「従業員を守る」ための重要な証跡になる。従業員はやましいことがなければ、堂々と「私の監査記録を見てください」と言えばよいのだ。会社による記録によって、自らの潔白が証明されるのだからこれ以上心強いことはない。

 しかし、「ウチの様な零細企業に監査なんか不要だ」という経営者もいる。

 どのような規模だとしても、会社としての内部統制ポリシー(方針)の策定には、要素としての「監査」が不可欠である。

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