ウェブやセキュリティにもリアルタイムが求められる:オラクル

大野晋一(編集部) 2007年07月19日 19時11分

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 かつては「8秒ルール」―インターネットサイトのトップページを表示する際、読み込みに8秒以上かかってはいけない、もちろんISDN全盛期の話だ―と言われたように、人が待てる限界を基準にシステムのレスポンスタイムの目標が決められていた。

 しかし、今やRFIDによる生産制御や株式の自動取引に代表されるように、サービスをうける対象が人でなかったり、人以外のものがサービスのトリガーとなるようなシステムが増えてきている。こうしたシステムにおいてはもはや、レスポンスが○○秒以内であれば許容範囲と考えることはできない。

 サービスの応答が速ければ速いほど競合優位性が生まれる。これまでとは異なる基準のスピードが情報システムに求められている。生産制御であればスピードが生産効率に直結するし、株式であれば1分・1秒というわずかな差で取引結果が変わってしまう。

 この特集ではこうしたシステムを「リアルタイムエンタープライズ」として取り上げ、前回はサン・マイクロシステムズにリアルタイムJavaについてお聞きした。今回は一階層下がって、データベースの視点からだ。一般的なアプリケーションにおいても高速化のボトルネックはデータベースにあることが多い。当然、リアルタイムエンタープライズのシステムを構築するにあたって、このボトルネックの解消は必須だ。

 Oracleでは、TimesTenと呼ばれるイン・メモリ・データベースをラインナップしている。TimesTenは、メモリ上のデータベースストレージに最適化されたリレーショナル・データベース・マネジメント・システム(RDBMS)で、高いレスポンスが特徴となる。また、イン・メモリ・データベースでありながらSQLによるアクセスが可能という特徴もある。

 典型的にはOracle Databaseのキャッシュのようなかたちでアプリケーションに接続され、アプリケーションのデータベースアクセスによるボトルネックを解消する。

 オラクルのシステム製品統括本部営業推進本部 Grid Computing推進部 担当シニアマネジャーの根岸徳彰氏にTimesTenをはじめとしたリアルタイムエンタープライズがどういったところで利用されているのか、また今後どういった分野で利用されうるのかを、リアルタイムなデータ取得が可能になったときどういった可能性が生まれるのかを伺った。同氏によればウェブやセキュリティといった分野でもリアルタイム処理が関係してくるという。

 「ユーザのレスポンスに対する期待が高くなっている。また、かつてはウェブを1ページ更新するために1つのデータ取得を行っていることがほとんどだった。しかし、現在ではウェブで提供される情報が複雑になり、更新のたびに数十のSQLが走ることになる。こうしてひとつのSQL処理に掛けられる時間が非常に短くなっている。特に証券や為替といった金融系ではこの傾向が強くTimesTenへの引き合いが多い」。

 同氏はRFIDなどこれまでのリアルタイム分野から、ウェブなどのエンタープライズ分野へとこうした要求のある分野が広がってきているとする。

 現状、高速化のニーズに対しては、ユーザの属性情報などをJavaオブジェクトとして保持することで解決していることが多い。しかし、ユーザ数やトランザクションが増加するに従って、こうした処理がボトルネックになることが多く、スケーラビリティに欠ける。ここで、さらに高速なものを作ろうとすると高度なプログラミングテクニックが要求される。そこで同社ではTimesTen上にキャッシュを持つことでスケーラビリティと簡単さを実現するという訴求を行っている。

 さらに根岸氏は、様々な新しい技術が引き金となってリアルタイムデータベースの適用範囲が広がるとする。

 「ユーザーに対してリッチなサービスを提供しようとすると、たくさんの情報を取得する必要がある。しかしユーザーを待たせるわけにはいかない。Ajaxによる非同期通信などはこれを解決するひとつの手段だが、データ取得をリアルタイムでできればさらに適用範囲が広がることになる」(同氏)。

 「また、金融系に加え、携帯電話などに搭載の進むICカードに関する分野でも導入が進むだろう。膨大なデータを高速にやりとりするための仕組みを作り込んでいるユーザは非常に多い。これを、新サービスの立ち上げなどに応じて拡張していく場合、TimesTenによるキャッシュの仕組みが候補として挙げられることが多い。この例では、人による操作ではなくICカードがトリガーになってデータのやりとりが始まり、データの受け手も人ではなくシステムとなる。データの量も速度も高いレベルとなる。もちろん、携帯に限らず、電子マネーも含まれる。大きな市場だ」(同氏)。

 もうひとつ同氏が挙げるのがセキュリティ。ここでもリアルタイム処理が要求され始めているという。「例えばクレジットカードの不正利用チェックは、現在、使ったその場でその使用が不正利用かどうか判断することができない。あくまで後でわかることだ。しかし、リアルタイム処理ができればその場で不正利用を判別することができる。監視ゲートなどでも、不審者の判別で同様の利用が期待できる。こうした分野への適用も期待されている」(同氏)。

 また、米国ですでにTimesTenが採用されている例として、日本で言う110番がある。米国では警察や消防局へ通報があった際、どこからかけているのか携帯電話のGPS機能と連動して通報者の位置をオペレータに知らせる仕組みがある。ここでTimesTenが採用されている。こうしたシステムは国内でもあり得るだろう。

 こうした例に共通するのは、リアルタイム処理によって最終的に向上するのは単純な速度ではなく、新しいサービスによる可能性の幅であるということがわかる。1件あたりの処理時間が十分に短かくなれば膨大なデータを同時に取得可能となる。これによってリッチなサービスが実現可能となるというわけだ。

 さて、次回はデータベースに限らず様々なインプットソースから渡される膨大な情報をアプリケーションの層でいかに処理していくのかという話だ。

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