セキュリティ担当部門が他部門や社員の監視に乗り出した当初、社員の間に動揺が広がったことは驚きに値しない。
Boden氏は「当部門が2006年に推進した啓発キャンペーンの資料は機械的なイメージを採用したものが多いが、それは開発チームに対する厳格でよそよそしい態度を如実に表すものだった」とし、「我々は開発チームとの間に良好な関係を築きたいと考え、そのようなアプローチは取らないことにした」と述べている。
今や開発チームとの関係は改善され、Boden氏率いるセキュリティ担当部門では地ビールやおつまみを交えた楽しい催しを定期的に主催するなど、社内の継続的なマーケティングキャンペーンに直接関与するようになっている。
「Redhook、Mac、Jack'sなどの銘柄がそろうここ米国北西部ではビールには不自由しない」とBoden氏は笑う。
Boden氏のセキュリティ担当部門はミッションこそ特異であるものの、17歳で高卒採用されたメンバーやコンピュータサイエンスの博士号を持つ経験豊富なメンバーなど、その顔ぶれは多彩であり、多様性に富むMicrosoftの一面をよく表している。
Boden氏の経歴も同様に多彩である。英国籍の両親のもとに米国で生まれた同氏は、英国のサウスポートで育った後、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアの高校に通った。コンピュータに興味を持った最初のきっかけはTandy TRS-80であった。Deloitte ConsultingからMicrosoftに転職すると、デスクトップとサーバの管理を担当した後、Windows 2000のプロジェクトマネージャーとしてセキュリティ分野に転身した。
「ソフトウェアを管理しているよりも、セキュリティ分野の課題やめまぐるしい変化のほうが楽しかった」とBoden氏は振り返る。
どうやら望みは存分にかなったようである。Microsoftがウェブテクノロジとともに成長するにつれ、帝国Microsoftに対する脅威もそれに比例して増大しているからである。