日本人技術者の“感性”をLinux/OSSに実装したい--The Linux Foundation - (page 2)

田中好伸(編集部)

2007-07-30 17:30

 実際、これまでに開催されたシンポジウムやセミナーは、2006年に3回、2007年もすでに2回開催されている。毎回、100〜150人もの技術者が参加しているという。来日したトップメンテナーは、現在米Googleに所属するAndrew Morton氏、米IBMのTed Tso氏、米SteelEyesのJames Bottomley氏、米Red HatのChris Wright氏、米NovellのGreg Kroah-Hartman氏といった一流である。

 日本から海外への発信という点で、工内氏が強調するのが、開発を競うシンポジウムである「Ottawa Linux Symposium」で日本人発言者が増加していることだ。この7月に開催された同シンポジウムでは、日本人が4人発言しているという。また、シンポジウムとは別に、開発コミュニティー本来の活動の中で、日本から出たパッチは質・量がともに向上しているともいう。さらには、日本人が開発した機能がLinuxカーネルに取り入れられているという事例も出てきている。

 美田晃伸氏が開発した「Linux Fault Injection」は、エラー発生機構と呼ばれるもので、Linuxカーネルの任意の場所で指定した頻度でエラーを発生させることができる。この機能を使うことで、カーネルでエラー処理が適正に処理されるかというテストができ、ソフトの堅牢性を高めることができるのである。この機能は、カーネル2.6.20から実装されている。

 「Fault Injectionは、ソフトの品質を高めるうえで非常に有用で、いかにも日本人らしい発想ですが、開発コミュニティーの中核メンバーにも非常に受け入れられて、実装されました。しかし、この機能が日本人によるものだということがあまり知られていなかった。こうしたことを日本人にももっと知ってもらって、日本からの提案をもっと増やしたいと思っています」(工内氏)

 事実、美田氏のFault Injectionは、この7月に開催されたシンポジウムで、その開発経緯や仕組みなどについて講演している。

ウェブでも情報を発信

 もちろんTLFが進める普及促進活動は、シンポジウムだけにとどまるわけではない。ウェブでの情報発信も展開している。ウェブでの情報発信はもともと、OSDLに参画していた企業が、SIerやシステムの運用管理者、あるいはユーザー企業の立場で具体的な改善策を検討・実施していくことを目的に、SI Forumとして情報を発信している。現在、SI Forumには、以下のような情報が蓄積されている。

  • なぜLinuxなのかを伺う
    企業経営者や情報システム部門のトップであるCIO向けに“なぜLinuxなのか”を説明・納得させるためのメッセージをまとめたもの
  • OSSミドルウェア/ツール調査
    Linux/OSSを活用するSIerが現場で使用しているOSSをリストアップ
  • 事例情報
    ユーザー企業がこれから構築しようとしているシステムと同様のシステム事例の参考になる。なお、この情報は独立行政法人の情報処理推進機構に寄贈され、オープンソース情報データベース「OSS iPedia」としてまとめられている

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