企業がオープンソースソフトウェア(OSS)を利用するメリットは、どこにあるのか――。システムを新しく導入する際の初期導入費が商用ソフトよりも安く上がるというコストダウン? それとも、特定のベンダーに囲い込まれるロックインを回避できる?
そのメリットはさまざまかもしれないが、OSSのメリットを100%活用しようと思うのであれば、ベンダーに頼り切らずに、ユーザー企業も社内システムのことを理解するのが一番重要なのではないだろうか。
社内システムを理解して、OSSが問題なく導入できるところから、その時々にあわせて“適材適所”のOSSを導入していくことで、OSSのメリットを生かし切る。そうした形でOSSのメリットを享受しているのが、日本電信電話(NTT)グループだ。
ブラックボックスにしたくない
NTTグループでは、NTT研究所においてOSやデータベース管理システム(DBMS)を中心にOSSの研究を行い、NTT東日本やNTT西日本などの事業会社に研究成果を提供してきていた。だが、事業会社でのOSS導入が拡大していることから、研究成果展開の一環としてNTTグループでOSSを最適に活用していくことを支援するために、2006年4月にOSSセンタを発足させている。
その目的について、OSSセンタ長の畠中優行氏はこう語る。
「NTTがグループとしてOSSに取り組む理由は、直近ではシステムのコストダウンを図るということが挙げられます。また、事業会社の社内システムをブラックボックスにしたくないという考えもあってOSSに取り組んでいます。さらなる目的としては、OSSを事業会社が扱う法人営業の商材の一つにしたいという考えもあります」
そうした目的のOSSセンタの具体的な活動は、(1)事業会社に対する、技術検証済みOSS製品群「OSs Suites VERified Techinically(OSSVERT、オズバート)」の提供、(2)事業会社の社内システムに導入されているOSSVERT構成要素などのOSSのサポートサービス、(3)世の中にOSSとして提供されていない戦略プロダクト開発――の3つの柱から構成されている。
NTT流スタック
(1)のOSSVERTとは、単体はもちろん組み合わせなどの技術検証を行ったうえで、OSとミドルウェアの検証済みOSS製品を“スイート”として定義したものを指している。OSSVERTは、NTT流のスタックと呼ぶことができるだろう。OSSセンタは全体で「80人ほどで構成されているが、そのうちの約10人が、OSSVERTの構築にあたっている」(畠中氏)という。