サーバ仮想化3.0は、技術的にはすでに可能だが、現実的にVMotionなどを用いて大規模な構成を運用しているかというと、まだ端緒についたばかりだ。この構成を設計し構築する技術者が、もう少し経験を積んでこないと、3.0が一気に普及するには至らないだろう。
3.0の時代が来れば、アプリケーション側からはハードウェアなどのサイジングを考慮する必要がなくなる。性能が足りなければ仮想化されたリソースが自動的に追加されるため、事前に必要なハードウェア能力を見積もる必要がなくなるのだ。逆に仮想化された次世代のインフラを構築するには、これまでとは違う技術スキルが要求されることになる。開発環境などの用途で利用するサーバ仮想化とは、明らかに異なる要素が必要となるのだ。
仮想化の速い普及ペースに乗り遅れるな
ハードウェアやソフトウェアの更新のタイミングは、OSを乗り換えるきっかけになる。そのOSを変える際、Linux、Windowsに加え、新たにハイパーバイザーが選択肢に加わることになるだろう。また、PCクライアントの環境もシンクライアント化への要求が高い。このシンクライアント化の後ろでもサーバ仮想化が活用される。こういった状況が、予想以上にサーバ仮想化の普及を後押ししているという。
現状、データセンター、サーバ、ソフトウェアとどの切り口からアプローチしても、仮想化に行き着くことになる。どのカットで仮想化市場をとらえればいいか判断は難しく、仮想化市場を定義するのも困難な作業だ。とはいえ仮想化に対する関心が高まっているので、IDCでは2007年内には国内の仮想化市場予測と各ベンダーのシェアを発表する予定だという。
プレイヤーにも、オープンソースソフトウェアと商用ソフトウェアがあり、仮想化という技術のどの部分でビジネスが成り立つのか、ベンダーはまだ手探り状態といえる。ユーザーは仮想化の自由度を最大限に生かすことができなければ納得せず、今後も現状のままで進むとは限らない。その中で、ベンダーは自社のビジネスが落ち込まないよう、価格やライセンスの形態、サービスのあり方を検討することになる。この時にタイミングを逃したり、ユーザーから後ろ向きと思われる対応をすると、現在OSや仮想化ソフトウェアで大きなシェアを持っているベンダーでも、足下をすくわれかねない。
「仮想化の普及は、ITに関わる人もベンダーも変革するきっかけになるのでは」と井出氏は言う。次世代のIT業界で生き抜くには、仮想化をいち早くキャッチアップしておく必要がありそうだ。