OSSを活用した基幹系システム構築の裏側を探る--第1回:「エンタープライズOSSソリューション」

鶴田展之(qnote)

2007-09-26 11:00

オープンソース・ソフトウェア(以下OSS)を取り巻く環境は、ここ数年で劇的に変化してきた。かつて「ベンダーサポートがないから」として敬遠されていたLinuxは、組み込みシステムを筆頭に、いまや欠くことのできないプラットフォームのひとつになっている。また、ApacheやJBoss、MySQLやPostgreSQLといったミドルウェアも、商用製品と並列に検討すべき選択肢として充分に認知されるようになった。さらに今後は、よりミッション・クリティカルな分野や、新たな社会インフラ基盤への採用が進むことも予想されている。

こういった社会の潮流の中、OSS/Linuxの持つ可能性にいち早く着目し、エンタープライズ・システムへの本格的な適用に積極的に取り組んできたのがNECである。早くも2000年には「Linuxサポートセンター」をスタートさせ、OSS/Linuxのノウハウを蓄積すると同時に、エンジニアの育成整備にも力を注いできた。その成果として、2004年春からはOSSミドルウェアによるシステム構築サービス、保守サービスを開始し、本格的なOSSビジネスを展開している。当コラムではこれから4回に渡り、同社のOSSへの取り組みから特にエンタープライズ・システム向けに提供されるソリューションを詳しく紹介していこう。

3階層のOSSソリューション

 NECでは、システムの規模や役割に応じ、OSSを用いたソリューションを3つの階層に分けて定義している。

NECのOSS/Linuxプラットフォームソリューション

NECのOSS/Linuxプラットフォームソリューション

 まず、情報系システムやWeb 2.0システム対象には、SpikeSourceコアスタックを基盤とした各種連携ソリューションを提供している。この分野では、導入からサービスインまでのスピード、そして低コストであることが特に求められる一方で、アプリケーションの安定性やサポート品質も犠牲にはできない。そこで同社では、SpikeSourceコアスタックという安定した共通基盤を提供し、多数のアプリケーションにより動作検証することで、迅速かつ高品位なサービスを狙っている。

 しかし、企業の基幹系システムや社会インフラの分野では、既存システムや連携するシステムとの関係の中で、利用するミドルウェアの構成やバージョン、各種設定に制限が加わることも多く、より深く顧客ニーズに即した形でのシステム構築が求められるケースが増えてくる。また、OSSだけではカバーできない部分は、商用ソフトウェアとの連携も必要になってくるだろう。そこで、企業の「基幹系システム」をターゲットとして提供されるのが、同社の「エンタープライズOSSソリューション」だ。もともとNECには、ミッション・クリティカル性の高い分野に向けたLinuxソリューションとして「エンタープライズLinuxソリューション for MC」があるが、これはLinux上で商用ミドルウェアを利用することが前提となっている。エンタープライズOSSソリューションでは、「for MC」のノウハウを受け継ぎながら、ミドルウェア群にも豊富なOSSが適用可能になり、より広範な顧客ニーズに対応できるようになった。つまり、安価で手軽な既製服であるSpikeSourceコアスタックから、素材選びも自在なテーラーメイドまで、幅広く対応可能なのが同社のOSSソリューションなのである。

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