ユーザーの理解を促す見せ方が重要
ID連携を商用サービスとして提供する立場である同社は、ID連携の価値についてどのように捉えているのだろうか。
島田氏は「いろんな面がある。まず、gooが配信する動画を、当社のポイントを使って安く提供したりと、サービス同士がシームレスに連携するモデルが1つの理想形だ。一方、企業の立場では、個人情報保護法やSOX法の対応について顧客から問われた時、サービスごとにIDが管理されている状態では問いに応じることができない。IDがきれいに連携されていれば、ユーザーの問い合わせにすぐに対応できる。IDマネジメントの観点からもID連携の価値はある」と説明する。
ユーザーは、意図的にIDを連携したい場合と、そうでない場合がある。例えば様々なサービスを利用するとポイントが貯まるとき、1つのIDにポイントを集約できる基盤があって、1枚のトークンがどこでも使えるのであれば、ユーザーにとってそのIDの付加価値は高い。一方で、あえてこのサービスには別のIDを使いたいといったケースも出てくる。
堀川氏は「ID連携技術を提供する側からは、ID連携はできないよりできた方が良いという立場だ。ID連携のメリットについては、ユーザーに自由に判断してもらい、利用してもらえればと考えている」と語り、ID連携は目的ではなく、あくまでも手段である点、サービスが連携して初めて意味を持つ技術だと強調する。
実際にID連携をサービス化するにあたって、技術導入のポイントはどこにあるのだろうか。これについて堀川氏は「企業主導ではなく、あくまでユーザー主導である点だ」と指摘する。
「ID連携は、わかる人にはわかる概念で、イノベーター層であればLibertyやSAMLといった言葉も良く知っている。しかし平均的なユーザーにとっては、やはりわかりにくい概念だ。ユーザーの目線では、サイト間でIDを連携させるための手続きを、なぜ自分が行わなければならないのか、そのメリットをなかなか見出せていない」(堀川氏)
ユーザーの理解を促すためには、ID連携の先に広がる素晴らしい世界を示す必要があると堀川氏は指摘する。ID連携の手続きというハードルを超えてもらうための、ユーザーの理解を促す見せ方、流れが重要なのだ。堀川氏は「ID連携技術は、見せ方を考えて活用すること、サービスのデザインにおいてそこを意識する必要がある」と語る。
では、運用管理におけるポイントはどうだろう。Libertyは本来、IDが一極集中することの危険性を指摘し、それを避けるためにIDを分散管理する仕様になっている。島田氏は、この分散管理の難しさを挙げる。
「分散管理なので、サービス側と密にやり取りしてログを見る必要があり、そこが難しい点だ。分散したまま管理しているため、例えば当社ではgoo側のアカウントのことはわからない。問い合わせを相互に回せるようなオペーレーションの連携が必要となる」(島田氏)
ユーザー情報の分散管理は運用連携が1つのポイントのようだ。ユーザー側も、分散管理であるから、連携した先に問い合わせても解決できないことを理解しておくことだ。