マイクロソフトは10月9日、徳島県勝浦郡上勝町とICTを利活用した地域振興について覚書を締結した。「日本における投資の拡大」を1つの柱とする経営方針「Plan-J」の策定から丸2年以上が経過した今、マイクロソフトが初めて町村レベルの地方自治体と提携したことになる。
徳島空港から車で1時間半ほどの場所にある上勝町役場で執り行われた調印式、記者会見には、上勝町から町長の笠松和市氏らが出席。マイクロソフトからは同社代表執行役社長のDarren Huston氏、同執行役専務 デジタルライフスタイル推進 担当の眞柄泰利氏、同業務執行役員 エリアビジネス統括本部 西日本ビジネス本部 本部長の早稲田哲夫氏、同SMS&P Plan-J 推進本部 市場開発部 部長の森本登志男氏、同西日本ビジネス本部 四国支店 支店長の楠瀬博文氏が出席した。
今回の提携は地域振興、過疎、少子高齢化、産業構造の変化などの課題について、マイクロソフトと上勝町が共同でICTを利活用し、同様の問題を抱える地域の模範となる事例の創出を目指す内容。具体的には、(1)過疎地域における自立的なICT利活用促進モデルの創出、(2)町内の光ファイバー網を生かした産業・生活でのICT利用促進、(3)高齢者のICT利活用についての検証と活用、(4)情報モラル・情報セキュリティ・知的財産の活用に関する啓発活動の、以上4点に取り組む。
(2)にあるように、昨秋、上勝町は光ファイバーを導入し、86%の世帯が光回線を利用できるようになっている。これを利活用した産業や生活について、笠松氏は電子医療の展開などで期待を寄せている。
また、Huston氏は「表面だけをなぞると、なぜビル・ゲイツの企業が(上勝町に)投資するかと思われるかもしれない。しかし、我々はPRが目的ではない」と語った上で、「北米、イタリアなどで高齢化など(上勝町と)同じ問題が発生している」と指摘する。「ICTを活用して何か変化をもたらしたい――そんな姿勢に胸を打たれた」という。「マイクロソフトはソフトウェアが大好きなコンピュータオタク(の集団)。ソフトウェアを活用することで、地域の課題を解決したい」(Huston氏)
マイクロソフトは7月、香川県高松市に四国支店を開設。四国におけるセミナー活動などのほか、自治体や教育機関、NPOなどと連携し、地域貢献の道を探ってもいた。Huston氏によれば、四国支店にはシティズンシップを担当する従業員もいるという。
しかし、上勝町とマイクロソフトは2年ほど前から交流がある。町への光ファイバー導入が決定した当時、ICTを活用するための道を模索していた笠松町長が、マイクロソフトと提携している徳島県を通じて同社に相談したのが始まりだという。その後の2年間、森本氏が窓口となり、上勝町、そして第三セクター「いろどり」の事業を支援してきた。
第三セクター「いろどり」の事業は、料理に添える葉の育成・出荷にパソコンやインターネットを活用して取り組んでいることで知られている。上勝町によれば、麦物市場の8割を占める2億5000万円の事業を運営しているとのことで、人口2000人を超える町に年間3800人が視察に訪れるという。