高橋氏はOSSユーザーの裾野は「今後間違いなく広がっていくだろう」と感じている。加えて、OSSというソフトウェアについて「使いこなせるようになるのが醍醐味だ」とも話している。「たとえばGoogleは、OSSをとにかくいじり倒して、今の地位にあるわけです。ユニアデックスの場合、Linuxの導入・保守サポートが現在の主要なOSS関連のビジネスになりますが、OSSをどこまで効果的に活用していけるかが根底となるOSSビジネスの基本です」と、高橋氏は、OSSとビジネスの関係を端的に語っている。
「今でもそうですが、Linuxが出てきたときには“夢”があったんです。一つの会社にロックインされた非標準技術ではなく、より良いものを求めて仕様の標準化を促すような、世界規模の大技術者集団とのコラボレーション。つまり、ソースコードを見られるというのは、純粋に技術力で勝負できる、“少ないコストでヒット商品を作ることだってできる”という期待を持つことができるわけです」
自由度を活用して付加価値を加える
このことは裏を返すと、「OSSには夢とチャレンジがないと絶対にダメ」(高橋氏)ということになる。OSS関連の技術や情報を獲得するには、コミュニティーとの関係を醸成させなければならないし、OSSで安定したシステムを構築するには、ハードウェアとの相性も確かめなければならない。自ら夢を描くくらいの気持ちがなければ、やっていけないのだ。
そうした行動を続けているが故に高橋氏は、OSSとビジネスの関係を分析して「苦労の割には、なかなか儲からない」とも語っている。
「収益構造が難しいだけに、OSSのビジネスは細くても良いから長く続けていかないといけない。そのためには、OSSの自由度を活用して、それによる付加価値を自ら利用していくことも重要だと思っています」
この数年で、OSSで収益を獲得しようとする製品ベンダーやSI事業者は、OSSという言葉を前面に押し出してきた。しかし、OSSでビジネスを展開し続け、その難しさを感じている高橋氏は「今後、OSSを前面に出す企業と、前面に出さずに展開する企業に分かれていくでしょうし、OSSへの取り組み方も各社で大きく異なってくるのではないでしょうか」という見方を明らかにしている。
商用ソフトよりも開発力がある
しかし、高橋氏が言う「OSSのビジネスはなかなか儲からない」という事実が明らかならば、企業としてOSSビジネスを止めてしまうという選択肢が存在するはずだ。その選択肢について高橋氏は「それでは、10年後にOSSは存在していないと思いますか」と問いかける。
「製品ベンダーやSI事業者は、10年後にOSSが存在していないとは誰も思っていないはずです。OSSという存在は10年後には当たり前な存在になっているでしょう。OSSから目を逸らすというのは未来から目を逸らすのと同じことだと思っています」