日本の状況について
同氏はまた、日本のオープンソースへの貢献を高く評価している。「日本は組込システム開発の分野では世界の中心だし、1990年代にはGNUソフトウェアの技術をいち早く受け入れることで世界をリードした存在でもある。ソニー、セガ、任天堂、松下、NEC、東芝といった企業は、GNUソフトウェアの急速な発展に多大な貢献を果たした。これは同時に、モバイルシステム開発においてLinuxがメインストリームとして使われるようになるという結果にも繋がっている。こうした日本企業が早い時期からOSSを利用し始めたことが、その後のオープンソースの発展に多大な影響を与えたと確信している」という。
日本人開発者へのアドバイスとして同氏は、「日本の開発者にとって最も重要なことは、自信を持って質問できるようになることだ」という。
「分からない点を明確にした上で“良い質問”を発することは、オープンソース開発者になるための最初のステップだ。自信を持って適切な質問を発するためには、時間もかかる。しかし、すぐに適切な質問を自信をもって発することができるようになるだろうし、それができれば、その答えを自力で見つけ出すことも容易になるはずだ。質問に自信が持てない人は、回答にも自信が持てないものだ」(Tiemann氏)
Tiemann氏の話には、DemingやGandhiから、日本で江戸時代に成立した越後屋(現在の三越)のエピソードまで、幅広い話題が飛び出し、教養の広さと深さを感じさせる。それは、技術一辺倒ではなく、広く社会に目を向け、オープンソースを通じていかに社会と関わっていくかについて深く考えを巡らせていることを窺わせるものだった。こうした人物がオープンソースコミュニティをリードする立場にあること自体が、オープンソースが成熟してきていることの証明なのではないだろうか。