UMLの生みの親、ソフトウェア開発のモラルを語る - (page 3)

文:Charles Cooper  翻訳校正:アークコミュニケーションズ、磯部達也

2007-10-26 08:00

--キーボードに向かいながらそのようなことを実際に考えるソフトウェア開発者がいるのでしょうか?

 たくさん知っていますよ。「社会的責任を考えるコンピューター専門家の会」(Computer Professionals for Social Responsibility)という名前のグループがあって、多くのメンバーがそのようなことを考えています。このグループは開発者の社会的な問題に取り組むために結成されました。大学を卒業したばかりの開発者が、シリコンバレーのどこかで害のないビジネスアプリケーションに携わるか、防衛関係の請負業者で働こうかと迷うこともあるでしょう。これは個人が自分のスキルを使うために下す必要があるモラル面の決定なのです。

--議論のための例を挙げましょう。Googleは営利企業ですが、中国当局と関係を持っていて、企業のポリシーとの関連で疑問を投げ掛ける人もいます。バークレー校を出た新卒エンジニア候補が応募先を決める場合、これらのモラルの問題に関する限り、Googleは軍隊と同等に評価されることになるんですか?

 それは当人が下すべき判断です。挙げられた疑問は哲学的な問題ですね。例えば、ユーザー間で接続を提供するソーシャルネットワーキングのようなものを実現するソフトウェアに携わっているとすれば、大量の情報が公開されるおそれがあります。そしてそうなってから、問題を沈静化させるはずの特定の機能を追加したところ、同時に、小児愛症者が簡単にネットワークに侵入できる方法を提供しただけのことになるかもしれません。

--あなたの論理に従えば、小児愛症者は携帯電話をふらちな目的で使用するのだから、携帯電話の設計に貢献した人たちも同じ問題に直面することになると言えませんか?

 ここでの問題は、技術者として個人のプライバシーを侵害するおそれがある機能を追加するかどうか、というだけではなく、警察がその人物を追跡するのに機能を使用できるかどうかも問題なのです。技術者として、その技術を実現する方法を知らない人に何かを提供する能力があるために、どちらに向けて開発するかが問題になります。それにもかかわらず、開発者が作るものによって影響を受けるポリシーを立案することになるのは、その人たちなのです。

--この例の場合も、作り出すレベルを担う人たちの問題ではなく、利用者側、つまり組織や企業、公共部門のどこかの部署にとっての問題ではありませんか?あなたの場合はIBMにお勤めですよね?

 そうです。

--そして、キーボードの前であなたがすることは、本来は善良でも邪悪でもありません。それがIBMが自社のテクノロジを使ってしていることで、それがおそらく影響力を持つことになります。数年前に、第2次大戦前のIBMと第三帝国との取り引きについて説明した書籍が出版されたことを思い出しました。

 ええ。

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