AIRをはじめとして、アドビが提供する技術がウェブプラットフォームを進化させている。日本のネット企業もこの新しい波にいち早く乗ろうと、さまざまなサービスを企画開発している。
アドビ システムズが主催したクリエイター向けイベント「Adobe MAX Japan 2007」において、「アドビ システムズが考える未来に向けたテクノロジーの可能性と日本市場に対しての展望」と題した特別講演が11月2日に開催された。
米Adobe Systemsプラットフォーム事業部担当シニアバイスプレジデント兼チーフ・ソフトウェアアーキテクトのケビン・リンチ氏がモデレーターを務め、サイバーエージェント、ヤフー、楽天の日系ネット企業3社のスピーカーが登場。FlashやAIRによる各社の新サービスのデモンストレーションが行われた。
サイバーエージェントが現在AIRベースで開発を進めているのが、「voq photo AIR」。このツールは、デスクトップで写真を整理するためのアプリケーションで、デスク上に写真を広げ、実際に写真を並べたり重ねたりするように直感的に操作できるのが特徴だ。また、このアプリケーションから直接Flickrに写真をアップロードすることができ、同社では「このツールをハブにしてさまざまなサービスを連携させたい」(新規開発局RIAテクニカルディレクターの矢内幸広氏)としている。
一方、ヤフーは現在、Flex 2による日本独自のウェブメールサービスを開発している。デモを行ったマーケティング本部長の大蘿淳司氏によると、JavaScriptより圧倒的に早い反応速度と、絵文字など日本独自のユーザーインターフェースに対応できる拡張性の高さ、開発スピードの早さにより、Flex2を採用したという。
楽天は、開発中の楽天市場用デスクトップアプリケーションを披露した。AIRをベースにしたこのツールはデスクトップに常駐し、楽天市場で検索した商品の中からお気に入りのものをウィンドウ内にドラッグ&ドロップで登録することが可能となる。ユーザーの手間を減らすことができ、より快適なネットショッピングを実現する。デモを行った取締役常務執行役員の安武弘晃氏は「AIRは学習が容易で開発者のクリエイティビティを生かしたリッチアプリケーションを簡単に制作できる」とAIRの利便性を強調した。
3社が開発中の新サービスは、「良いインターフェースとはユーザーに重要な情報が伝えられるもの」という楽天 安武氏の発言に代表されるように、いずれもインターフェースの重要性を意識したものだ。その背景には、インターネットユーザー層の拡大が挙げられる。
ヤフー大蘿氏が「これからのインターネットは個人が中心になる。個人に最適化したプラットフォームの再構築が必要だ。さらに、多様化するデバイスへの対応や、デバイスを越えて情報を一元的に管理するシームレスな環境が必要」と語ったように、今後のネットサービスは提供側がユーザーのTPOに合わせられるようにサービス環境を整えることが必要だと各社は認識している。
また、今回紹介されたアプリケーションは、いずれもAPIが公開されるのも特筆すべき傾向だ。ヤフーの大蘿氏は「ユーザーのニーズやTPOは無限大。その声に応えるために、これからはさまざまなAPIを公開し、ほかの開発者との連携を図っていきたい」と語る。
Adobe のリンチ氏はAIR Beta 2をはじめ、Adobe Media Player Betaなどのリリースを予定した2008年のロードマップを公開。「2008年はAdobeにとっても業界にとってもエキサイティングな1年になるだろう」として、講演を締めくくった。