前回は、プロジェクトを成功へと導くために不可欠な最も重要なポイントである「目的」や「プロジェクトオーナー」「ステークホルダー」の見極め、「目標の設定」について解説した。これらの要素は、「5W1H」で言う「Who?(だれが?)」や「Why?(なぜ?)」の見極めだと言い換えてもよい。
今回は、いよいよプロジェクトを形づくるその他の要素である「What?(何を?)」「Where?(どこ?)」「When?(いつ?)」を具体化し、さらにプロジェクト全体の「見える化」を進めていこう。
仕事の「地図」を共有することによるメリット
それではまず、プロジェクトの地図(マップ)を共有することで、いかにチームの「生産性」や「創造性」が高まるかについて考えてみたい。
プロジェクトを目的地へと導くプロセスは、オリエンテーリングで「地図とコンパス」を頼りに、チーム一丸となって目的地を目指す様子に似ている。
私たちは日常生活において、この地図という道具を老若男女問わず、当たり前に活用している。また、建築の世界では、必ず「完成予想図」を詳細に描いてから、現実の建設作業に着手するのが常識だ。しかしながら、現代のビジネス環境やプロジェクト環境を見る限り、残念ながらこの「地図」や「完成予想図」に相当する一般的な道具は見当たらない。
では、なぜビジネスの世界では、こうした「地図」に相当するもの使わないのか。それは、地図の利用者が必ずしも地図の作成者になりえるとは限らないからではないだろうか。日常生活を見ても、「地図の利用者」は大勢いるが、地図の作成に携わっている人はほんの一部だ。ならば、この知的労働型のプロジェクトにおいて「地図」を創るべき人は一体誰なのだろう?
私は、それこそが知識社会と呼ばれる現代で働くビジネスリーダーやプロジェクトリーダーの中心的な役割だと考える。プロジェクトといった未知の部分が多い仕事に不可欠なのは、この「地図」をプロジェクト内に創り出し、チームで共有しつつ、「目的地」を目指して仕事を進めていくことではないだろうか。そうすることで、未知なるプロジェクト活動をより創造的で生産的なコラボレーション環境へと変えることができるのだ。
私たちが仕事の「地図」を共有することで得られるメリットは多い。地図は、それを見る人に、世界の全体像や周辺との関係性をわかりやすく提示してくれる。これによって、私たちは様々な視点で物事を考え、リラックスしながらより創造的に物事の本質を捉えられるようになる。さらに、地図の共有によって、関係者を同じ土俵に上げ、同じ方向へ向かわせることが実に容易になる。地図は、プロジェクトにおいて見失われがちな「目的地」や「方向性」を確認、共有する手段として最適な道具なのだ。
本連載では、プロジェクトの「見える化」を実現するための効果的な手法として「マインドマップ」を推奨している。私はこの「地図(マップ)」を描くための方法の一つとして「マインドマップ」が相応しいものであると考えており、その支援ツールとしてマインドジェットの「MindManager」を推奨している点を強調しておきたい。
これまでの連載の中でも、MindManagerを使ったプロジェクトを「見える化」する手順を紹介しているが、今後も引き続き、このツールを使った具体的な作業方法を解説していく。まだ手元にMindManagerがない読者は、ぜひ、こちらのフォーム(リンク先)から試用版の申し込みを行い、実際に操作を行いながら読み進めていただければ幸いである。