Embeddedファミリーに属さない2製品
さて、Microsoftでは、ここまでに紹介したWindows Embeddedファミリーに属さない製品も2製品用意している。それは、スマートフォンなどのモバイル端末に向けた「Windows Mobile」と、車載機器用の「Windows Automotive」だ。2製品共にCEをベースとしたOSだが、これらはEmbeddedファミリー製品とは違い、OEMパートナーとの個別契約によってのみ提供される。
もちろん、この2製品をEmbeddedファミリーから独立させているのは、同社がこの分野に注力している現れでもある。特にWindows Mobileに関しては、ウィルコムの「W-ZERO3」(シャープ製)を皮切りに、ソフトバンク、NTTドコモなどの携帯端末でWindows Mobileを搭載した機種が発売され、一般ユーザーからの注目も高まっている。
さあ、これで読者の皆さんも、Microsoftがどのような組み込みOSを提供しているか、理解できただろうか。もちろん、組み込みOSはMicrosoft製だけではない。東京大学のTRONプロジェクトから生まれた国産の「ITRON」や、Wind Riverの「VxWorks」、Symbianの「Symbian OS」など、数多くの組み込みOSが存在する。
Microsoftの組み込みOSの特長を同社 モバイル&エンベデッドデバイス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの松岡正人氏に聞いたところ、「実行環境のテストが実機なしにできる。例えば、VoIP端末などの組み込み機器に設けられた小さな液晶画面の表示をテストしたい場合、通常は実機が必要だが、CEであればPC上で表示項目などをエミュレーションできる。タッチパネルの画面も、マウスを動かしてタッチパネルの操作をテストできる」としている。これが、開発の短期化にもつながるという。
一般ユーザーが意識して使うことは少ない組み込みOSだが、Microsoftの組み込みOSを使えば、「開発者は、ユーザーがどういった使い方をするかを中心に考え、使い勝手やユーザーインターフェース、サービス部分にフォーカスして組み立てることが可能」と松岡氏。開発者にとっても、ユーザーにとってもやさしいOSとなっているようだ。
W-ZERO3のような一般ユーザーに人気の端末だけでなく、ハイエンドの複合機などにも多く使われているというMicrosoftの組み込みOS。身の回りのWindowsマシンは、PC以外にも意外とたくさんあるのかもしれない。