一方米国のキャリアは、NGN構想においてネットワークをIP化するよりも、固定電話網、移動体通信網、インターネット、テレビという4つのサービスを融合することに注力している。光ブロードバンド環境で高品質な映像を提供し、加入者数で劣るケーブルテレビ事業者を追撃する構えだ。とはいえ富士通は、長年つき合いのあるAT&TやVerizonといった通信キャリアだけでなく、ケーブルテレビ事業者に対しても先端製品を提供し、双方の需要に応えている。
また、英BTでは、古くなった電話網を再構築することが急務だ。そこで、ネットワークをIP化し、簡素化することでコスト削減しようという「BT's 21st Century Network(BT21CN)戦略」を推進、浮いたコストは「New Wave」と呼ばれるデジタルネットワークサービスに投資する意向だ。BT21CN戦略において富士通は、BTの既存のアクセスネットワークとIPベースネットワークを接続するマルチサービスアクセスノードを提供する。実は、欧州で富士通の通信事業を担うFujitsu Telecommunications Europeは、BTとの共同出資で設立したという経緯もあり、BT21CNにおいても富士通はBTの戦略パートナーとして指名されている。
富士通のビジネスは欧米のみにとどまらない。台湾のPCCW社に対しても富士通は、SIPサーバ、コールサーバ、電子メールサーバなどの製品を提供し、PCCWの企業向けサービスを支援している。
Cisco Systemsとの提携も
富士通は、Cisco Systemsと戦略提携し、共同でハイエンドルータの「Fujitsu and Cisco XR12400」や「Fujitsu and Cisco CRS-1」を開発した。「Ciscoがルータのソースを公開したのは富士通が初めてだ」と林氏は語る。
デバイス開発における実績は、同社が、日米間やアジア、地中海、ヨーロッパを結ぶ次世代光海底ケーブルネットワークを受注していることからもわかる。すでに、海底中継器を2000台以上設置した実績があり、「中継器の故障ゼロ」(林氏)だという。
このように富士通は、NGNの構築に向け、さまざまなアプローチを続けている。林氏は、「われわれがBTに提供するADSLは英国で50%のシェアを持ち、米国の光伝送システムにおけるシェアも30%獲得している。富士通では日本のみならず、北米やヨーロッパをはじめ、グローバルで事業を展開しているのだ。NGNは新たなビジネスチャンスととらえており、今後も事情の異なるキャリアに最適な通信インフラを提供していきたい」とした。