ストック系情報や知識・ノウハウを共有するシステムの導入が進まない、その主な理由は「利用者、利用部門が得られるメリットがはっきり見えないこと」(原氏)が挙げられるという。
同調査や研究会で得られた見解として、原氏は「Googleで検索しているような作業を、そのまま社内に持ち込みたい、持ち込んで成功した、そういう例もある。しかし、そのまま持ってきても失敗したという話になっていると思う」と語る。「理由は簡単で、なんでも魔法のように自動で分類されて検索結果が出てくると思っているからダメ。企業の特定部門だけに検索エンジンを持ち込めば、絶対成功する」
栗原氏も「期待値のコントロールと言うべきか、あまり期待しすぎても問題。部門レベルで成功したら、ある意味、成功と言える」との見解だ。
特定部門のように、検索の範囲、知識を共有する範囲をある程度限定することで、より使い勝手が向上するという構図だ。
「ホワイトカラーの知的生産性の向上を!」と大上段に振りかぶると失敗してしまいがち──そんな答えがみえてくる。
原氏はエンタープライズサーチの導入について、「部門導入したら成功する。この部門とこの部門に導入するというコミットメントはできるだろう。ただ、バラバラにやったのでは埒が明かないので、小さく入れて大きく育てる」という。つまり、最初は部門導入から入るとしても、最終的には全体最適され全社の情報アクセスインフラにしようということだ。
ここで会場から「知的生産性の向上に成功する、失敗するというが、その測定はどのようにするのか」という質問が飛んだ。
この質問に対し、原氏は「測定できないと思う」と回答。直接の答えにはならないがと前置きした上で、「サーチエンジンを入れてホワイトカラーの知的生産性を何%向上します、なんて言っても、稟議は通らない(笑)。それくらい定量化するのが難しい問題だ」と続ける。しかし一方で、「情報量が爆発的に増えていて、フェイストゥフェイスや紙の文書でまかなえる範囲を超えている。ITを使わなければならないのでは?そんな説得はできる。(エンタープライズサーチを)情報システムのインフラと位置づけ、これが無いと何もできないと言えば、答えが返ってくるのではないか」とヒントを示している。
栗原氏は「指標で評価することで最も難しいのは、指標そのものが目的化してしまうこと」だという。例えば製造業向け製品の販売について、「100社に営業をかける」という指標を設定した場合、この指標の達成そのものが目的化すると、製造業以外の企業に営業をかけ、100社のノルマをこなすといった事態が発生する。
「指標そのものが目的化すると、生産性の弊害になる。指標で管理することが大事であって、指標を管理してはならない。これは重要なポイントになるだろう」(栗原氏)