背景を調査して完全に問題ないことが分かるまでは買収事案を進めるべきではない。その理由は単純である。買収前に少しでも怪しいと感じられた点は後で問題になる可能性が高いからだ。以下に買収候補の正真性を調べているときに気をつけるべき5つの危険信号について説明する。
危険信号1:ターゲット企業の売上高の大部分があなたの理解できない事業に由来している
なぜ危険なのか:その買収はあなたの企業の戦略と一貫した関連性を持たないかもしれない。もしそうなら、あなたが買収した企業を効果的に経営する方法を理解できない可能性が高くなる。なぜなら、その市場で事業を運営するルールがあなたにとって未知のままだからである。
引用:「80年代には、多角化ブームが起こり、誰もが金になりそうな企業を手当たり次第に買収していた。ほとんどの場合、買収した企業をさんざん使い倒してだめにしてしまう以外、どのように経営するか分かっていなかった」
--Edward Weiss氏、Bregman, Berbert, Schwartz & Gilday所属、および数社の企業を買収したのちにPitney Bowesに買収されたGroup 1 Software, Inc.の元法律顧問
危険信号2:ターゲット企業が自社とまったく異なる企業文化を持っている
なぜ危険なのか:1つの会社を別の会社に統合するには、一般に従業員の仕事の再割当て、レイオフ、配置転換が伴い、いずれも対応が難しい。その上に経営スタイルの違いや事業の運営方法に関する意見の対立で混乱を増悪させることは避けるべきである。
引用:「ビジネスの運営方法をめぐるアイデアが一致しない企業と合併すると、必ず大きな問題が発生する。異なる派閥同士が激しく対立し合い、しかもそれが必ずしも表面に現れているとは限らないので、従業員同士の問題を解決するのがきわめて難しくなることがある」
--Richard Caro氏、サンフランシスコに拠点を置き、企業の成長を支援するコンサルティング会社Tangible Futureの最高経営責任者(CEO)
危険信号3:ターゲット企業の売上高や在庫残高が最近になって急激に改善した
なぜ危険なのか:そのデータはターゲット企業の継続的な事業の持続的な変化を反映したものではなく、一時的な現象なのかもしれない。より悪質なケースでは、ターゲット企業の評価を実際の状態よりも魅力的に見せるよう画策している場合すらある。
引用:「その取引を大局的に見る必要がある。少しでも不審な点があれば、さらに掘り下げて事実を調べるべきである。例えば、前年度に売上高が急増している場合は、一時的に売り上げが好調だっただけかもしれない。明白な理由がないのに在庫量が急激に変化している場合は、効率的に見せるために過去の在庫を少なく記載していたのかもしれない」
--Rocco Pezza氏、小中規模企業に合併、買収、資金調達についてアドバイスするNew England Brokerage Corporationの社長