1997年、ストレージの業界団体として誕生したSNIA(Storage Networking Industry Association)は、その直後に訪れたData Explosion(データの爆発)の中でITシステムに対するストレージの重要性をアピールし、ストレージベンダーの地位向上を果たしてきた。サーバセントリックの中でストレージはややもすれば周辺装置と見られていた時代に比べ、この10年でストレージの役割が格段に向上したのは間違いない。だからこそ、今、ストレージに突きつけられている課題も多い。そこで、SNIAの会長を務めるVincent Franceschini氏に、これまでの経緯と今後の展開を聞いた。
軸足をストレージからあらゆるITフィールドに
――2007年、SNIAは創立10周年を迎えました。この間のSNIAの取り組みにはどのような変化がありましたか。
ご指摘のように、SNIAは1997年に主にアメリカを中心としたストレージベンダーの業界団体として設立し、すでに10年の歴史を持っています。この間、ストレージを取り巻く環境は大きく変遷し、特に4~5年前からユーザーのストレージに対するニーズも変わってきました。そのため、設立当初のようにストレージやストレージネットワークにフォーカスするだけでは不十分となり、われわれはこの10年の間に活動の範囲を移行するとともに拡大してきました。
設立当初はストレージビジネスを振興するためのテクノロジーにフォーカスしていたのですが、その後は情報管理という部分にその軸足を移しています。さらにデータセンターのユーザーも単なるサーバからアプリケーションに注目するようになってきたように、われわれの活動もハードウェアからソフトウェアへとシフトしてきました。ネットワークについても、それ自身がインフラと見られてきた時代から、モバイルリソースも含めた幅広いサービスのインフラが求められるようになっています。同時に、SNIAのメンバー企業もストレージベンダーだけでなく、アプリケーションベンダーやユーザーへと拡大しました。
このように、ストレージおよびストレージネットワークを取り巻く状況は著しく変化し、SNIAもこの10年の間に変遷してきた要求に柔軟に対応し、その目的や活動内容を変革してきたというのが実状です。
――SNIA自身大きな変革を遂げてきたということですが、現在の重点テーマは何でしょう。
SNIAのミッションも変わりました。この10年でSNIAを取り巻く状況が大きく変化したので、それを受ける形で2007年10月に開催したストレージの国際会議である「Storage Networking World」(SNW)で今後の10年間を展望した戦略を打ち出しています。
それまでのSNIAは、信頼性の高いストレージネットワークの導入促進をミッションとして掲げていましたが、今後は情報管理を行う企業や団体の支援を目的に、標準的な規格やテクノロジ、さらに教育サービスを開発し推進することで世界のストレージ市場をリードしていくというミッションを変えました。それによってユーザーに最適な情報管理サービスを提供していくということです。
例えば、より幅広いIT業界の課題にフォーカスするということで、社会的にも大きな課題となっている環境問題に対する「Green Storage Initiacive」(GSI)という新たなイニシアチブを立ち上げました。同時に、セキュリティとデータの整合性、そしてデータ管理という課題に対応することも明確に打ち出しました。
つまりSNIAは情報管理という枠組みを越え、ストレージテクノロジーやソリューション、そしてベストプラクティスを包括的に開発、提供し、支援する団体に変わるということです。そして何よりも、SNIA自身がグローバルな組織であることを意識し、各国のサイトの統一も図りました。