人事はSaaSにピッタリ
同社は、人事情報管理と給与計算を統合された一つのサービスとして提供するために、周辺の業務も合わせて提供するBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)のメニューも用意している。顧客の要求に合わせてオペレーションを行い、その結果をクライアントや外部機関にデリバリーする。社員からの問い合わせにはコールセンターが答え、すべてのシステム運用を代行する。このオペレーション、デリバリー、コールセンター、そしてシステム運用という4つのモジュールを、クライアントの要望に応じて提供するのである。
北原氏は、情報システムの3つのモジュール(Webワークフロー、人事情報DB、給与計算システム)は今、パッケージからSaaS(Software as a Service)に置き換わろうとしているという。ブロードバンドが整備された今日、エンジニアを自社で抱え、自社内のサーバでシステム運用を行う必然性はもはやない。
従来のビジネスモデルでは、ベンダーはパッケージという商品をユーザーに販売し、それを稼働させるために個別にサーバを用意し、トラブルがあればエンジニアを派遣し、ある時はウイルス対策を施し、そして時期がくればバージョンアップを行って保守料を受け取ってきた。それ以外の提供方法はなかったのである。
しかし、ソフトを売るというモデルは常にユーザーに負荷を与え続ける。またベンダー側にも手離れが悪いという悪循環を招いてしまう。その悪循環を断ち切るためにはSaaSがいい。ソフトを売らなければ、つまりSaaSでソフトを貸すという形にすれば、こうした問題を解決できる。
そして北原氏は「人事はCRMとともにSaaSに適した業務」だという。
「人事業務は企業の競争優位に関わる部分ではないが、人事制度やビジネスルールは企業ごとに異なります。ユーザは、システム運用などの負荷を負うことなく、自社の制度やルールにマッチしたサービスを受け取りたいと考えているはずです」
企業ごとに異なる人事制度をどのように実装するかが、SaaSベンダー、アウトソーサーとしての腕の見せ所だ。
「アウトソーサーが考えるよりも、ユーザ企業が考える人事制度のほうが常にバラエティに富んでいます。人事DBや給与計算でいくら多くのテンプレートを用意しても、そのフィット率はせいぜい6割くらい。半数近くの要求には応えられないのです。つまり、ASPでいくら豊富にテンプレートを用意したところで、あまり意味はないのです。そのため、当社はテンプレートではなく、すべてパラメータで、ワークフローもデータベースの項目も給与の計算式も設定できるようになっています」