M&Aの達人になるために:すべてはあなたの交渉術 - (page 2)

文:Geoffrey James
翻訳校正:ラテックス・インターナショナル

2008-02-05 12:00

 「われわれは交渉の前には、常にこの買収を実行したい理由とそれによって生み出される価値を明らかにする。そして、そのような分析に基づいて交渉を進めていく」とCadence Design Systemsの法律顧問を務めるSmith McKeithen氏は説明する。Cadence Design Systemsは15億ドルのソフトウェア企業であり、過去10年間で多くの企業を買収してきた。「会話の内容が、その取引のために事前に定義したパラメータから逸脱しないように注意しなければならない」(McKeithen氏)

 ある程度交渉の余地を残しておくのは当たり前のようだが非常に重要だ。あなたはバリュエーション(企業価値評価)の過程で財務上のデューデリジェンスは実行済みだろうが、初回のオファーの金額はその企業の真の価値のおおむね75〜90%程度にしておくべきだ。最初の提案が即座に拒否されてしまったら、いずれにしても交渉が契約書として結実する可能性は低い。したがって、買収する側の企業は賢い提案をすることによって多大な時間と労力を節約できるのである。

条件を交渉する

目的:統合を成功させるための詳細な契約書を作成する

 初回のオファーが済んだら、さらに複雑な交渉が始まる。重要なことは両社が注目する最終的な金額だけでなく、オファーとカウンターオファーの応酬の過程で、特に売り手側の企業が提示する論理的根拠である。買い手側の企業にとっては、そうした論理的根拠はバリュエーションの重要な手段になると、カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバーを拠点として活動する投資銀行家のDoug Brockway氏は指摘する。Brockway氏はInnovation Advisorsのマネージングディレクターとして中規模市場の10数社の技術系企業の交渉と合併の実施を手伝ってきた。

 「交渉を意味のあるものにするためには、売り手側企業の事業内容を詳細に説明する必要があるため、交渉はデューデリジェンスの延長になる。その結果、その企業と価値に対する最初の印象が正しかったかどうかをより適切に評価できるようになる」とBrockway氏は指摘する。

 財務に関する交渉も、買い手側の企業にとっては相手企業の売上高の不可解な変動など、合併の成功に影響を与える可能性のある問題を詳細に調べる機会を与えてくれる。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]