「われわれは交渉の前には、常にこの買収を実行したい理由とそれによって生み出される価値を明らかにする。そして、そのような分析に基づいて交渉を進めていく」とCadence Design Systemsの法律顧問を務めるSmith McKeithen氏は説明する。Cadence Design Systemsは15億ドルのソフトウェア企業であり、過去10年間で多くの企業を買収してきた。「会話の内容が、その取引のために事前に定義したパラメータから逸脱しないように注意しなければならない」(McKeithen氏)
ある程度交渉の余地を残しておくのは当たり前のようだが非常に重要だ。あなたはバリュエーション(企業価値評価)の過程で財務上のデューデリジェンスは実行済みだろうが、初回のオファーの金額はその企業の真の価値のおおむね75〜90%程度にしておくべきだ。最初の提案が即座に拒否されてしまったら、いずれにしても交渉が契約書として結実する可能性は低い。したがって、買収する側の企業は賢い提案をすることによって多大な時間と労力を節約できるのである。
条件を交渉する
目的:統合を成功させるための詳細な契約書を作成する
初回のオファーが済んだら、さらに複雑な交渉が始まる。重要なことは両社が注目する最終的な金額だけでなく、オファーとカウンターオファーの応酬の過程で、特に売り手側の企業が提示する論理的根拠である。買い手側の企業にとっては、そうした論理的根拠はバリュエーションの重要な手段になると、カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバーを拠点として活動する投資銀行家のDoug Brockway氏は指摘する。Brockway氏はInnovation Advisorsのマネージングディレクターとして中規模市場の10数社の技術系企業の交渉と合併の実施を手伝ってきた。
「交渉を意味のあるものにするためには、売り手側企業の事業内容を詳細に説明する必要があるため、交渉はデューデリジェンスの延長になる。その結果、その企業と価値に対する最初の印象が正しかったかどうかをより適切に評価できるようになる」とBrockway氏は指摘する。
財務に関する交渉も、買い手側の企業にとっては相手企業の売上高の不可解な変動など、合併の成功に影響を与える可能性のある問題を詳細に調べる機会を与えてくれる。