Fast Search & Transfer主催のイベント「FASTforward '08」にて、「Wikinomics」の著者でNew Paradigmのチーフエグゼクティブを務めるDon Tapscott氏が講演し、ウェブの世界で起こっている変化と、その変化の要因について語った。
「今起こっている変化によって、企業の本質が変わりつつある。イノベーションの方法も変われば、いかにして価値を生み出すかも変わってくる」とTapscott氏は指摘する。その上で、こうした変化の要因を4つに分けて説明した。
Tapscott氏の言う変化の要因は4つある。それは、「Web 2.0」「ネット世代の子供たち」「ソーシャル革命」「経済革命」だ。
まずWeb 2.0はどう変化を起こすのか。Tapscott氏は過去を振り返り、Web 1.0がHTMLがベースで「コンテンツを見せるだけのものだった」と話す。一方、Web 2.0のベースはXMLで、「コンピューティングするためのプラットフォームになっている」とTapscott氏。同氏は、Flikrに愛犬の写真をアップロードし、タグとして犬種を入力しただけで、世界中にいる同じ犬種の写真に簡単にアクセスできるようになった例を話し、「誰もが無意識にプログラミングしている。これこそWeb 2.0だ」と述べた。
次の要因は、ネット世代の子供たちだ。今の子供たちは、ネットがあるのが当たり前の世界で育っているため、「ネットは彼らにとって空気のようなもの。技術に対する恐れもない」とTapscott氏は指摘する。「ビジネスの世界では『メールこそキラーアプリ』と言っているが、今の子供たちはメールを古い技術だと言い、IMやSNSなどを中心に使っている。メールの使い道を聞くと、『友人の両親にお礼の手紙を送る時に使うフォーマルな通信手段』という答えが返ってきた」とTapscott氏。こうした世代が育つにしたがって、大きな変化が起こるというのだ。
3点目のソーシャル革命とは、上記2つの要因が合わさって起こるものだ。つまり、FlikrやYouTube、FacebookなどXMLベースのコミュニティが飛躍的な成長を遂げていることを指す。Tapscott氏は、著書「Wikinomics」を自分の子供に読ませたところ、子供がFacebookにWikinomicsコミュニティを作ったというエピソードを話した。「コミュニティが立ち上がって数分で数人のユーザーがつき、数日後には大きなコミュニティへと成長していた。このコミュニティで本の間違いを指摘されたこともある」とTapscott氏は述べ、こうしたコミュニティの威力は無視できないものだと述べた。
そして最後の経済革命は、上記3つの要因がすべて重なり合って起こる。ネット関連企業が巨大複合企業へと成長しているのだ。例えばGoogleは、サーチエンジンからはじまったが、収益面では広告企業で、YouTubeを買収してメディア企業にもなっている。
「新しいウェブや新しい世代に生まれた若者によって、企業も次の時代に移ろうとしている」とTapscott氏。こうした変化の中で、いかに企業がリーダーシップを取っていくのか、今後問われることになりそうだ。