マイクロソフトは2月29日、CRM製品の最新版「Microsoft Dynamics CRM 4.0」を発表した。同バージョンより、従来の社内設置型に加え、日本でもSaaS(Software as a Service)形式でCRMの提供を開始する。
マイクロソフト マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 業務執行役員統括本部長の御代茂樹氏は、「SaaS形式は、初期費用が抑えられ、すぐに始められる。また、メンテナンスをする必要もない」という利点を挙げた上で、「懸念点もある」と話す。それは、「SaaSベンダーのメンテナンスの都合によって、自社で使いたいときに使えないこともある。また、長期間利用するとトータルコストは設置型の方が安くつく。とはいえ、一度SaaS形式で始めてしまうと、SaaS専属ベンダーの場合、設置型への移行は困難な作業になる」といった点だ。
Dynamicsは、設置型とSaaSで同一の製品とソースコードを用いているため、「SaaS形式で利用していた機能やデータを容易に設置型へと移行できる」と御代氏。部門単位で試しにDynamicsをSaaS利用していた企業が、規模を拡大して全社で採用する場合も、設置型への移行コストは最小限に抑えられるとしている。
北米では、SaaS形式のCRMとして、2007年11月より「CRM Live」が提供開始された。これは、Microsoftが自らCRMのホスティングサービスを提供するものだが、今回発表されたDynamics 4.0によるホスティングサービスは、パートナー企業がMicrosoft製品によるサービスを提供するためのライセンス契約を結び、独自のソリューションを付加して顧客に提供する「パートナーホスティング」形式となる。Dynamics 4.0は英語版がすでに2007年12月に発表されており、英語圏ではパートナーホスティングによるDynamicsのSaaS提供も始まっている。
CRM LiveもDynamicsがベースとなっているため、機能面に大きな違いはないが、マイクロソフト マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 マーケティング部 CRMプロダクトマネージャーの吉田周平氏は、「CRM Liveは個人事業主などをターゲットとしたごく少数での利用を想定しており、Dynamicsのパートナーホスティングは将来的に設置型への移行も見込んだ上でのエントリーモデルという位置づけ」と説明する。
日本では、13のパートナー企業がDynamicsを活用したホスティングサービスを提供する予定だ。日立情報システムズ CMプロジェクト推進本部 CRMソリューションプロモーションオフィス 本部長の下鳥恭介氏は、「パートナーホスティングモデルは、これまで初期費用が出せない、試しに使ってみたい、使いながらカスタマイズしていきたいといった企業に対する解決策となる」と述べ、今夏にはホスティングサービスを開始したいと述べた。