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セキュリティのゼネラリスト目指せ--暗号研究の第一人者が語る人材像 - (page 2)

小山安博 冨田秀継(編集部)

2008-03-11 12:00

認証としての暗号

 暗号技術が拡大を続けているというのもポイントだ。暗号というと「もの(データ)を隠す」という「秘匿」目的で使われると思われがちだが、最近は「認証」としての利用が増えているそうだ。

 「人」を認証するだけでなく、たとえば業務プリンタのトナーカートリッジが純正品かどうかを確認する、といった「もの」を認証する例も増えているという。暗号の利用が拡大する中、10年以上にわたって破られない強固な暗号を開発した三菱電機、しかも基本部分は無償――それが三菱電機の評価を高めている、というわけだ。

最新の暗号の世界

 暗号研究の最新動向としては「量子暗号」がホットなトピックだろう。

 三菱電機では2001年から05年までの5カ年計画で、国内初の量子暗号の開発を進めてきた。2002年には量子暗号通信システムで当時世界最長距離の通信を実現するなど、着実に要素技術開発を進め、その時点で松井氏も「5~10年後には実用化できる」と話していた。

 この5カ年計画は情報通信研究機構(NICT)委託による計画で、2006年からは第2次の5カ年計画が始まり、いよいよ実用化に向けた開発が始まっているところだ。NEC、NTTらとの開発で、2011年の5カ年計画最終年度には実用化にこぎ着けたい考えだ。

 ただ、この実用化には「超えなければいけない壁がある」と松井氏。量子暗号自体はすでに動作しているのだが、通信速度・距離ともまだまだ「実用的なレベルに達していない」(同)のが現状なのだ。実際、通信距離が100km程度の場合通信速度が数kbpsのオーダーになってしまう。

 また、安全性の評価も課題になっているという。

 量子暗号は、光ファイバを使って光子を飛ばして実現しているが、光子はファイバを通るたびに減衰し、始点から100個の光子を送った場合に1個しか届かないこともある。このとき、完全な量子メモリをもった敵が99個の光子を奪って残りの1個を届けたら――終点では届かなかった光子が減衰したのか奪われたのか判断できないというのだ。この問題に対しては、減衰したものは奪われたと考えて評価するようになっているという。量子暗号では、安全性と距離の間に密接な関係があるのだそうだ。

 松井氏は「量子暗号は高級な糸電話のようなもので、1対1で対話する」と例えてみせる。中継が難しいため、中継せずにどこまで距離を伸ばすことができるかが課題で、この延長を進めていくとともに、通信速度の向上も図っていく。「数Mbpsオーダーまで拡大する」(同)のが目標だ。

 量子暗号は、技術的には絶対盗聴不可能と言われる強固な暗号だが、コスト面などを含め、当初は政府や金融機関、データセンターなどの高セキュリティ領域で利用され、現代暗号と併用される、というのが松井氏の考え。同社が目指しているのは、量子暗号単体ではスピードの問題があるため、量子暗号を鍵交換に、実際のデータ暗号化を同社のMISTYというように、双方を組み合わせて「いいとこ取りをして安全性とスピードを両立させる」(同)ことを狙っている。こうして技術間にまたがる世代の橋渡しを行い、最終的に量子暗号に移行していく目標だ。

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