(前回までのあらすじ:これまで何かと縁のあったゴーカイ極まりない役員に連れられていった寿司屋で、突然、「今やっている仕事について考えていること」をプレゼンするよう迫られたボク。もう後には引けない。ここでしくじれば、全部取り上げられる…。飛び出しそうな心臓を左手で抑えつつ、どうにかこうにか説明を終えると、ゴーカイ役員は据わった目でじっとボクをにらみ付け、ひとこと「わかった。がんばれ」とだけ言ってビールをあおり、自分の退任を告げた。その後の寿司屋では、湿っぽい空気を一転させようと、なぜか大将が演歌を歌い、ボクがジャズを歌うことになる……)
....気付けば店の中がパァっと明るくなっていた。演歌の不思議な力を実感。あの役員がこの店をひいきにする理由がなんとなーくわかった。
歌い終わるや、あの役員は棚の上のホコリをかぶったギターとトランペットのケースを指差した。「大将やるの?俺も若いころ横須賀でラッパ吹いててね・・・」顔真っ赤だし、目は据わって怖いし、もーかなり酔ってるから、ほんとかどーかはわからない。
あの役員は、マスコさんにギターを、フジイさんにトランペットを棚から下ろさせた。ふたりは手際よくケースから取り出して音合わせを始めた。
「何かやってみろ!」ゼッタイ言うと思ったもんね!マスコさんがカバンの中から譜面を取り出してボクに渡した。なんでもってんの?ま、とにかくそんなワケでボクは歌うことになったんです。寿司屋でジャズか・・・シブイぜ。