トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』は上巻が面白いが、アラン・グリーンスパンの『波乱の時代』は下巻が面白い。なぜかと言えば、これらの巻がグローバルなテーマを取り上げているのに対し、対を成す巻は自国アメリカに焦点が絞られているからである。小説ではないので、セットで読まなくとも、それぞれの巻を読むだけでも十分意義がある。『フラット化する世界』については以前取り上げたので、今回は『波乱の時代』について少し取り上げたい。
この中でグリーンスパンは、米国、欧州、日本、南米、そして印・中・露の経済体制に関し、自由競争とセーフティネットを対比させつつ分析をする。同じ資本主義と目される国でも、「経済体制のなかで自由資本市場体制が最善のものである」(P34)という命題に対し、アメリカ人は71%が同調する一方、フランス人は36%しか賛意を示さないという世論調査の結果が示され、いかに国の歴史・文化的背景が各国の経済体制に色濃い影響を与えているかが明らかにされる。
これは経済体制に関する一例であるが、他にも所得格差、高齢化社会、コーポレート・ガバナンス、エネルギー資源など、グリーンスパンは様々な経済事象に対して鋭い持論を展開している。しかし、その著作の第二十章には「謎」という奇妙なタイトルが付けられている。ここでは、このグリーンスパンですら、その原因が理解できなかった事象について語っている。