セキュアコーディング:そこにある見えない大問題 - (page 3)

文:Dennis Howlett 翻訳校正:石橋啓一郎

2008-04-18 11:27

 あまりにも長い間セキュリティに関する話を聞いているせいで、われわれは感覚が麻痺してしまい、単にIT予算の中に隠されている高い保険料をと改善費用を払うことでよしとしてしまっているのかも知れない。ここで、Davidoson氏の批判で参照されている組織、SANSに注意を向けてみたい。手元に、セキュリティ上の脆弱性トップ20のリストがある。この中には、次のように書かれている。

 コンテンツ管理システム(CMS)、Wiki、ポータル、掲示板、フォーラムなどのウェブアプリケーションは、大小の組織に使われている。多くの組織はまた、その組織の事業のために専用に構築されたウェブアプリケーションを開発し維持している(実際、そのアプリケーションが事業そのものであることも多い)。毎週、市販されているウェブアプリケーションやオープンソースのウェブアプリケーションに関する何百という脆弱性が報じられており、積極的に破られている。一方で専用に構築されたウェブアプリケーションもやはり攻撃の対象になっており、それらのアプリケーションが持つ脆弱性によって破られているが、これらは@RISK、CVE、BugTraqのような公的な脆弱性データベースに報告もされていなければ、追跡もされていないことに注意して欲しい。大規模なウェブホスティングファームの一部が受けている攻撃の試みの数は、1日につき何十万件から、時には何百万件に及ぶ場合もある。

 読者はおそらく、報じられている脆弱性の数があまりにも莫大になってきているということには賛成するだろうと思う。特に関係している開発技術が、マーケティング担当者やソーシャルメディア評論家が耳を傾ける人すべてに押しつけている、現在の「ウェブ2.0・エンタープライズ2.0」のスタイルのアプリケーションに直接的に結びつくものである場合にはそうだ。

 これらの善意の人々は、これが企業にどういう影響をもたらすか、一秒でも考えたことがあるのだろうか。誰か、潜在的に安全でないシステムを、ボトムアップ方式で導入することは、将来IT部門にネズミの巣を渡すようなものだということを思った人はいないだろうか。これらの非公式なシステムが、すでに問題になっているトランザクションシステムと統合されることを真剣に考えたことがある人はいるだろうか。これらの問題は、クラウドコンピューティングの世界では緩和することができるだろうか。IT部門がクラウドコンピューティングやソーシャルコンピューティングに懐疑的なのは、果たして驚くべきことだろうか。

 誤解して欲しくないのだが、私はわれわれがよりオープンな形態のコミュニケーションに移行しており、新しい方法で共有や協調を行ったり、低コストコンピューティングのもたらすものを経験し始めているというようなことに水を差そうとしているわけではない。しかし、これらすべての良きものは、既存の進化しつつあるソフトウェア生態系の文脈の上にあることも忘れるべきではない。外向きのソーシャルコンピューティングの流れは無くなるわけではないが、企業がより効率的にマーケティングしようということを超えて、熟慮しようとする試みもわずかではあるが見えている。もし、従来の店舗用システムであれ、クラウドで動くシステムであれ、堅牢なトランザクションシステムと安全に統合することができなければ、業界自体が完全に失敗してしまうだろう。

 企業はこれまでに、ソフトウェアに何兆ドルも投資してきており、そのソフトウェアは堅牢な場合もあるが、多くの場合は弱いものだ。Davidson氏の評価は、何年もの間業界自体に無視されてきたことに対する反作用であり、将来ITが直面する問題を反映したものであるかも知れないという議論はできる。しかし、同氏が将来に向かってしっかり準備をしているという事実は、少なくとも1人のソフトウェア企業の役員は、われわれ全員が信用できる、安全性を確保したソフトウェアを開発することに対し真剣に取り組んでいるということを示している。これは賞賛されるべきことだ。新しいソフトウェアでは定期的にバグが発見されるという話で、背中から撃つ同業者がいることが分かっているとしてもだ。

 一方で、私はAlex Iskold氏の花形ソフトウェアエンジニアの持つ10の特質に関する記事を見て気づいたことがある。セキュアコードを書く能力については、一度も触れられていないのだ。

 終わりに。私はDavidson氏に多くの質問に答えて欲しいと考えていたのだが、この記事の発表時点までに返答を得ることができなかった。これは、今後また考えてみたいトピックだ。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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