Enterprise 2.0 SUMMIT 2008 TOKYO開催--「関心はあるけど消極的」な現状を打破するには?

柴田克己(編集部)

2008-04-21 17:13

 「“Enterprise 2.0”とは何か?」「実現のための技術やツールには何があるのか」「実際に着手、推進するためにはどうすればいいのか」……ブログやWiki、SNSといったWeb 2.0のテクノロジーを利用して、企業内での知識や情報を集約し、新たな価値を生むコラボレーションを実現しようという取り組み「Enterpirse 2.0」について、有識者やベンダー、ユーザーらが意見を交わすセミナーイベントが4月17日に開催された。テックバイザージェイピー主催、エス・イー・ラボ、トラクションソフトウェア共催による、この「Enterprise 2.0 SUMMIT 2008 TOKYO」は、東京・浜松町のWTCコンファレンスセンターで行われ、同テーマに関心を持つ多くのユーザー企業の担当者、業界関係者らが参加した。

栗原潔氏 テックバイザージェイピー代表取締役の栗原潔氏。

 主催者であるテックバイザージェイピー代表取締役の栗原潔氏は、イベントの冒頭であいさつに立ち、Web 2.0による集合知の構築はすでに現実になっているにもかかわらず、これを企業内で推進しようとすると、まだまだ受け入れられないケースが多いという現状を指摘。実際に成果を上げている例も出てきていることに触れつつ「Enterprise 2.0に着手し、推進していくためには、これまでの企業文化の変革が必要。セミナーで得た知識を、ぜひ明日から、実践してほしい」と述べた。

Enterprise 2.0の概念と事例、そして問題点

 オープニングは、McKinsey&CompanyのコンサルタントであるJoseph Newsum氏による「米国事情、そして日本でのEnterprise 2.0浸透の期待と予感」と題されたセッション。

Joseph Newsum氏 McKinsey&CompanyコンサルタントのJoseph Newsum氏。

 Newsum氏は、多くの企業が継続的な成長を求められている中で、コミュニケーションのためのコストが増加したり、従来の組織構造が新たな環境での企業活動に適さなくなってきていることなどが“Enterprise 2.0”に対するニーズを高めていると説明。組織が現在持っている「理念」を生かしつつ導入を進めることで、新たな価値を生み出すことができるとし、Linden Lab、P&G、Pixar Animation Studioといった米国企業で実際に導入されて成果を上げているEnterprise 2.0の事例を示した。一方で、Enterprise 2.0に関心を持ちながらも「優先順位は低い」と考える企業が多いという現状にも言及。その原因として、組織に起こる力関係の変化や、技術に関する知識不足、法的な問題などが存在すると説明した。

 午前中に行われたもうひとつのセッションは、ハーバードビジネススクール准教授のAndrew McAfee氏へのインタビュービデオの上映だ。ウェブコラボレーション製品「TeamPage」などを手がける米Traction Softwareの創設者であるGregory Lloyd氏が、事前に日本のイベント参加者から募った質問を、McAfee氏に対して提示するというスタイルで進行した。

Andrew McAfee氏 Enterprise 2.0の提唱者として知られるAndrew McAfee氏。

 McAfee氏は、2006年に「Enterprise 2.0: The Dawn of Emerging Collaboration」と題する論文をMIT Sloan Management Review誌に寄稿し、Enterprise 2.0の提唱者として知られる人物である。McAfee氏は、パッケージ化されたITの導入と、ベストプラクティスに準じた運用が浸透することで、企業の「類似性」が高まっていると指摘。Enterprise 2.0は、その中で勝者と敗者を分ける「差別化」を生む源泉として機能するとした。また、この言葉が指すものは、ツールが「いかに作られたか」や「どのように導入されたか」ではなく、「どのように使われたか」であるという視点を改めて強調。そのほか、Enterprise 2.0を構成するツールを普及させるためにクリアすべき課題や、よく取りざたされる「セキュリティリスク」に関する見解、その将来性などについてのアイデアを披露した。

 ZDNet Japanでは、各セッションの詳細に関する記事を追って掲載する。

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