豊かな交流促す技術の舞台は「携帯」であり「グローバル」--ウタゴエ園田社長に聞く - (page 2)

松島拡

2008-05-01 22:21

“シリコンバレー株式会社”と戦うには

――ウタゴエ設立の経緯は。

 学生時代に研究していた技術を世に出し、社会に新しい事業を創出したい、というのが一番の動機でした。私の所属していた早稲田大学村岡研究室には、日本初のサーチエンジン「千里眼」を開発した先輩と、歌声で楽曲を探す研究をしている先輩がいました。私は、その二つの技術を融合して、ビジネスにしようと思ったのです。

 起業を始めたのは学部の2年生のときですが、ビジネスパートナーを見つけ、実際に会社を立ち上げるまでには5年ほどかかりました。設立時、ニューヨーク・タイムズに「うたごえ検索」を取り上げてもらったことがきっかけで、グローバルに展開し、世界で通用する会社にしたい、という目標を持つようになりました。

――日本のベンチャー企業が、MicrosoftやYahoo、Googleのような、世界的ブランドを築けないでいる理由についてどう考えますか。

 アメリカの場合、有望なベンチャー企業は、ベンチャーキャピタルの強力なサポートを受けられます。また、アメリカのベンチャーキャピタルは、例えば利益を上げている検索エンジンの会社に投資する一方で、収益の少ない動画共有サービスの会社にも投資し、この2社を掛け合わせることでさらなる成功を収めています。短期的には儲からない動画共有サービス会社でも、どんどんインフラを追加し、最高のサービスを開発・提供できる環境があるわけです。

 一方、日本では、彼らと対抗するだけの資金を集めるのが難しいだけでなく、売却でイグジットしづらい市場になっています。日本のITベンチャーは、技術的には確実にすごいものを持っています。でも、相手はいわば「シリコンバレー株式会社」ですから、これと正面から戦うのでは、分が悪いのではないでしょうか。

――そうした現状を踏まえ、ウタゴエはどのような海外戦略を持っていますか。

 いくつかのパターンを考えていますが、まずは現地の文化に溶け込んで、いちプレーヤーとして立ち上がっていく方法です。2つ目として、アメリカにいながら日本法人を相手にビジネス展開し、その収益を使って、投資を受けずにサービスを作るパターンもあります。ただ、最も重要だと思っているのは、3つ目のパターン、日本にいながら海外展開する方法です。本当に優れた技術やサービスを持って、世界に向けて発信していれば、本来、海外からもニーズのある顧客がラブコールを送ってくださるはずですから。

――最後に、現在の課題と、今後の展開について教えて下さい。

 一般的に、技術が開発されて市場に到達するまでに要する期間は、約18カ月といわれます。当社も、技術にとんがった部分を扱っているので、市場投入までの時間のマネジメントが非常に重要な課題ですね。もちろん、映像のリアルタイム性や画質の確保など、技術的な課題も残されています。

 当社が、2008年のキーワードとして最重視しているのは、「携帯」と「グローバル」です。具体的には、現在のメイン2事業を、2009年中に携帯電話上でひとつに統合する予定です。ワンセグの普及によって、携帯電話でテレビを観る習慣ができつつあることは、当社にとって追い風になるだろうと期待しています。グローバル展開に関しては、手探りながら先に述べた3つのパターンをすでに試しています。3年以内に、ウタゴエの社名、あるいは提供サービスが、世界中で知られている状態になっていればいいですね。

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