ICT教育推進プログラム協議会は5月21日、ICT(Information Communication Technology、情報コミュニケーション技術)を活用した授業が学力に与える影響について分析した結果を発表した。
この研究は、文部科学省の委託により、独立行政法人メディア教育開発センター(NIME)が中心となって2005年と2006年に実施した。ICTを活用した授業を実施したのは、2005年で344件、2006年で408件。その結果、「教員の実感としてだけではなく、客観テストにも結果が出ており、授業にICTを活用することは学力向上に確実に効果がある」と、ICT教育推進プログラム協議会 会長 NIME 理事長の清水康敬氏は述べた。
具体的にICTを活用した例としては、プロジェクタの利用で図解を拡大表示したことや、教師がタブレットPCを使って生徒個人に合わせたきめ細やかな指導ができたこと、また生徒がインターネットを活用して調べたことをまとめ、タブレットPCを活用したプレゼンテーションを行ったことなどがある。
清水氏によると、97.5%の教員がICTを活用した結果、生徒の学力が上がったことを実感しており、98%の教員がICTで生徒の関心や意欲が高まったと回答している。また、教員が中心となってICTを活用する方が、生徒中心で活用するより教育効果が高く、授業の中では特に導入場面においてICT活用の効果が高かったという。
NIMEでは、マイクロソフトと共同で、ICTを活用した学校教育の実証研究「NEXTプロジェクト」を推進しているが、このプロジェクトの下、和歌山市が市内の小学校52校で合計1300台のタブレットPCを導入している。実際にタブレットPCを使った授業を実施している和歌山県和歌山市有功東小学校の教諭 本岡朋氏は、「タブレットPCを生徒は電子ノートとして利用している。これは書いた内容の履歴が残るため、履歴を分析して生徒がどこでつまづいているのか非常にわかりやすくなった。生徒も自分の考えたプロセスを再確認できるようになった」と、実際の効果について語った。
ベネッセコーポレーション 執行役員 教育研究開発本部本部長 ベネッセ教育研究開発センター センター長の新井健一氏は、「各国では教育現場でのICT活用が進んでおり、高度情報化社会に備えているが、日本での取り組みは世界の基準に追いついていない」と警告する。少子高齢化が進み、労働人口が減少の一途をたどる中、新井氏は教育の重要性を強調しており、ICTリテラシーを含む社会に必要な能力の育成に力を入れるべきだとした。