たとえば、出張を会議システムで置き換えれば、人を動かす必要はなくなるし、それに付随したお金の出費や時間も節約できる。そうすることで、ほかの必要な業務にそれらの節約されたリソースを使うことができる。そのため、ひとつに出張先との案件も、ここでの業務も平行して行えるという効果が期待できる。あるいは翌日の仕事の英気を養うために社員に早めに帰宅させるということも可能になる。
しかし、これによって出張のすべてを会議システムで置き換えるべきと言っているわけではない。筆者も出張すべき時は出張する。むしろ会議システムは、出張を置き換えるものではなく、補完するものと考えるべきだ。
たとえば、今後の方針などを決めたりする業務の節目では出張し、節目以外の業務上の連絡や意識合わせなどの局面で会議システムを使えば、出張のほかにその出張先とのもう一つのコミュニケーションのパイプを持つことができる。では具体的にどこで使うべきか? それは社内規定で明文化する方法もあるが、日々の会議システムに対する“慣れ”を通して、感覚として掴めるようになる部分も大きい。
実はパワーユーザーは、会議システムを習慣化させるための取り組みを自発的に行ってきたからこそパワーユーザーになったということができる。つまり「習うより慣れろ」を組織的に実践しているのである。初めから、「あの会社はウチと違う」というわけではない。
あくまでもツール
会議システムはあくまでも道具(ツール)である。彼らは、道具というものは、使おうという意識がなければ使いこなせないし、習熟しないということをよく自覚している。だから使いこなせるようになった。だから効果が出ているのだ。パワーユーザーたちは何も難しく考えていない。しかし一方で使いこなせていない企業は、逆に何か秘策があるのではないかと難しく考えすぎていると思う。実は秘策は何もないのである。
また、会議システム導入後は一時的に利用が増えるがその後、一度利用が下がるパターンはどこの会社でも経験するのが普通だ。右肩上がりで問題なく利用が増加するというのはまれなこと。結局“埃がかぶった”ところは、その最初の“山”で自社には適さないと判断してしまう。実はそこが耐えどころであり、「非日常」であった会議システムの利用が、「日常」という習慣になるかの大事な分かれ目なのだ。そこを踏ん張れば、山を乗り切れて日常化のきっかけをつかめるはずなのに、「ウチは使いこなせない」とすぐ判断してしまう。非常にもったいないことをしている。