本当に必要なレコメンド技術は何か
さて、こうした要件を満たしてくれるレコメンド技術とは一体何なのだろうか。第3回では、ケイビーエムジェイの見解として、協調フィルタリング×アイテムベースが最適だと紹介した。しかし、これだけでは不適切なレコメンドや重複したレコメンドの回避ができない。前回のおさらいとして、再度「協調フィルタリング×アイテムベース」の課題を確認してみよう。
- セットで購入するケースが少ない場合、レコメンドされない、またはレコメンドの精度が悪くなる
- レコメンドされるアイテムが人気の高いアイテムに偏る
- レコメンドされるアイテムが長期間掲載しているアイテムに偏る
- 同一アイテムに対する連続的な閲覧や、クローラーなどの閲覧によって偏る
- 関連性のないカテゴリのアイテムがレコメンドされてしまう
- 自動計算では意図的なレコメンドができない
パーソナライズド・レコメンダーでは、ユーザーの行動履歴を抽出する方法に特徴があるほか、さまざまな切り口による重み付けや、カテゴリフィルタ、ルールベースなどを併用することで、こうした課題の解決に取り組んでいる。ここに挙げた課題の解決方法を、パーソナライズド・レコメンダーを例として解説してみよう。
課題1:レコメンドの精度が悪い
レコメンドの精度の悪さは、ユーザーの行動履歴の抽出方法を工夫することで解決できる。パーソナライズド・レコメンダーでは、ウェブビーコンを複数の場所に設置することで、各レコメンド機能を補完し、幅広いアイテムをレコメンドしている。ウェブビーコンの設置例は以下の通りである。
- ユーザーがアイテムの商品詳細ページを閲覧した際(閲覧ベース)
- ユーザーがアイテムをカートに入れるなど、アイテムに興味を示した行動を取った際(興味ベース)
- ユーザーがアイテムを購入した際(購入ベース)
このように複数の行動履歴を利用することで、今回の例では閲覧ベース、興味ベース、購入ベースの3タイプのユーザー嗜好が蓄積できる。また、データ蓄積が少ない購入完了ページに閲覧ベースのデータを利用するといったように、複数のユーザー嗜好データを絡めることも可能だ。データを絡めて利用する場合は、それぞれの項目に重み付けをしている。具体的には、閲覧ベースよりも、カート投入の際にカウントする興味ベースの方がアイテム間の結びつきが強くなり、興味ベースよりも購入ベースの方が結びつきが強くなるといった具合だ。