地底にデータセンターを設置するプロジェクトが日本国内で進行中だ。このデータセンターは、ITのあり方を根底から覆す可能性があるという。都内で開催された「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2008」にて、オープンスタンダードコンソーシアム(OSC)代表幹事 オープンスタンダード化推進協議会(OSAC)理事 ビジネスプロセス革新協議会(BPIA)理事の中村彰二朗氏がこのプロジェクトの意義を語った。
通称「もぐらプロジェクト」と呼ばれているこのプロジェクトは、2010年にサービスインする予定だ。サン・マイクロシステムズをはじめ、インターネットイニシアティブ、ベリングポイントなど、12団体が参加しており、全消費電力の50%削減を実現する究極のエコデータセンターを目指して建設が進められている。
エコデータセンター実現のために導入されるのは、シンクライアントとエコサーバだ。また、サンの提供するモジュール型データセンターで集積率を上げ、省スペース化を実現する。さらに、データセンターは発電所に近い場所に設置し、「電力送電のロスも軽減される」と中村氏。このプロジェクトには、電力会社も支援しているという。
また、地底データセンターでは水冷による冷却システムを導入する予定だ。中村氏によると、現行のデータセンターではITそのものの消費電力を1ワットとすると、冷却にかかる消費電力は0.65ワットにもなる。それが、地底データセンターでは水温が約8度の地下水15万トンを循環させて冷却するため、「冷却のための消費電力は0.38ワットまで削減される」と中村氏は説明する。
地底にデータセンターを置くことのもうひとつのメリットは、探査衛星から発見できないためセキュリティが保たれることだ。中村氏は、「日本政府が米国国防総省とネットワーク接続したくても、これまで米国側は日本のようにデータセンターの場所がわかっているようなネットワークとは接続したくないと断られていた。こうした課題がクリアされる」と話す。
また、このプロジェクトは現在東京に集中しているデータセンターを分散させることで、それぞれが災害復旧センターになる可能性も見据えている。
中村氏は、地方にデータセンターを設置することは、災害復旧という観点以外にも意味があるとしている。それは、最先端技術への関心は地方の方が高いためだ。というのも、地方自治体ではレガシーのIT資産を抱えており、そのメンテナンスのためにコストがかかって新しいIT投資ができない状況に陥っており、仮想化技術やITのユーティリティ化を首都圏以上に強く望んでいるのだという。
「2010年に地底データセンターがスタートする時期には、仮想化技術を活用したユーティリティコンピューティングが実現可能となっていることを目指す」(中村氏)
ITのユーティリティ化をも視野に入れたプロジェクトを進めることで、「ITベンダーもビジネスモデルが変わることを意識しなくてはならない」と中村氏は指摘する。「ITのコスト構造が変わると理解し、ITが効率よく回る方法を考えていくべき。今のビジネスモデルにしがみついて箱売りだけをしていては、サービス化が進む中で取り残されてしまうだろう」(中村氏)