したがってその記事が、まるで誰かが注意深く観察していたかのように書かれていたことが、わたしには奇妙に思えました。彼らはわれわれが他の企業とは違っていたことを見ることになるのです。そして、わずか約4年後にInfoWorldでわれわれを揶揄した記事が掲載されました。その記事では、Microsoftがその日、Ashton Tateが決して存続することはないと発表したと書かれていたのです。これは少しやりすぎです。しかし、この時期にMicrosoftは頭角を現したのです。
多くの興味深い複雑な経過がありました。ある時点で実際にLotusと合併の話をしたことがありますが、企業文化という点では相性は良くありませんでした。実際には協議を打ち切ったのは(LotusのCEOであるJim)Manzi氏のほうだったのです。しかし、必ずしも現実になることはなかったと思います。
ある日、非常に奇妙なことが起こりました。IBMはPCの発売イベントにわれわれを招待しなかったのです。以前には招待されていたのですが、IBMはわれわれを招待しないことに決めたのです。われわれはそれまで昼も夜も働いてきました。わたしは人々に、われわれは招待をもらったので参加することになるだろう、そしてこれは大きな取引になるだろうと言っていました。しかし、IBM側は、いや、われわれはあなた方にはイベントに来て欲しくないと思っている、との決定を下したのです。これにはちょっと気がめいりました。今となってはどうでもいいという感じですが・・・。
--そうした初期の時代を振り返ったときに、Microsoftの経営を始めたばかりの21歳のあなたに助言を与えることができるとしたら、なんとアドバイスしますか。その当時は知らなかったけれども現在は知っていることで、その当時には役に立っただろうというものはありますか。
特にないですね。アドバイスできるとしたら、君はこれから成功するのだから、あんまり働きすぎるなよとかそんなことでしょうか。しかし、それですべてが完全に変わってしまうかもしれませんね。または、今後はエンジニアリングのスキルだけではなくてさまざまなスキルが必要になるのでそれを学びなさいということでしょうか。しかし、まず、事実としてわれわれが過度にエンジニアリングに重点を置いていたことはそれほど間違っていなかったということです。
今日、企業が大規模になるにつれて、すべてのさまざまなスキルのセットを身につけていても、どちらかというとエンジニアリングを重視するべきだという圧力が生じてきます。わたしは人間の知能はその他の物事を学べるほど代替可能ではないと当時の自分自身に対して言うことができたでしょう。人々がAという分野で知能を示したら、それをBという分野でも使用するべきだと当時は常々考えていました。
そして、このやり方はある程度うまくいきました。業界の他の企業もこのやり方を行っています。たとえば、優秀な科学者を雇い、プログラマーとして採用する場合、面接で専門分野に関する知識の深さを確かめ、他の分野にも適応できるだろうと判断しています。これは部分的には正しいですが、経営や人事について言えば、応用が効く頭脳を持つ人材は驚くほど少ないのです。
つまり、ビジネスのキャリア全体でわたしが最も驚いたのは、1つのことについてはとても優秀なのに、原理やモデル、アプローチが非常に似通っているのにもかかわらず、別のことには非常に弱く、優れているとは言い難い人々がいることです。
(編集部注:Bill Gates氏のインタビュー後半は7月1日に公開を予定しています)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ