アップルを意識するソニー:中期経営計画からビジネスモデルの相似を読む - (page 2)

大河原克行

2008-06-26 21:37

「環境」が周辺を飲みこむ

 Appleは、iTunes StoreによってiPodで魅力的な音楽コンテンツを楽しめる環境を確立し、これを背景にハードの売り上げを拡大している。

 ソニーも魅力的なコンテンツを配信することで、ソニー製ハードの売り上げ増加につなげるというスタンスでは一緒だ。

 だが、Appleの場合ではその効果がiPod、Macの販売増加に留まるのに対して、ソニーの場合は液晶テレビ、PC、ウォークマン、PLAYSTATION3、プレイステーション・ポータブル、携帯電話など多岐に渡る。いや、2010年には90%の製品カテゴリでネットワーク対応を図るというのであれば、その影響力はさらに拡大するだろう。

iTunesは収益にインパクトを与えない程度のビジネス

 さらにAppleとの違いをつけ加えると、ソニーは音楽、映画、ゲームなどのコンテンツをグループ内に有することだ。

 AppleにとってiTunes Storeによる音楽・映像配信事業は決して収益にはなっていない。全米で音楽販売実績ではナンバーワンとなり、過去5年間に渡り50億曲以上の累計販売数量を誇ったとしても、1曲99セントでは、単純計算で約50億ドルの売上高に留まる。年平均に換算すれば約10億ドルという計算だ。

 2007年度実績で売上高が240億ドルのアップルにとって影響力は低い。また、収益性の面ではさらにその影響力が低いといえる。

 だが、ソニーは直接コンテンツの売り上げ増加につなげることができる。

 Appleがコンテンツのすべてを第三者に委ねるのとは異なり、ソニーはコンテンツビジネスをより戦略的に展開でき、さらに収益面でも貢献を見込めるというわけだ。

 そして、このネットワーク戦略はソニー製品同士をつなげることにもなり、いわばソニー製品による囲い込みにもつながる。

 今回の会見のなかで、ソニー 代表執行役会長兼CEOのHoward Stringer氏は何度となく「Apple」という言葉を持ち出した。しかしながら、Stringer氏はコメントのなかでAppleとの差を明確に訴えたわけではなかった。むしろ、その点では言及を避けていたともいえる。

 これは、ビジネスモデルではAppleを意識しながらも、その影響力がAppleの比ではないことを暗に示したかったから、といっては勘ぐりすぎだろうか。

ソニー 代表執行役会長兼CEO Howard Stringer氏 ソニー 代表執行役会長兼CEO Howard Stringer氏

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