欧州市場に強みを持つカスペルスキー
続いて登壇したのは、Kaspersky Labで最高執行責任者(COO)を務めるEvgeny Buyakin氏だ。「Riding the Tornado. How to Manage (Crazy) Growth?」と題した講演で、同社の急成長とそれを持続させるための施策を発表した。
Buyakin氏によれば、Kaspersky Labが10万ユーザーを獲得するのに要した期間について、2006年6月は80日をかけていたが、2008年6月は80時間でこれを達成している計算になるという。こうした急成長が演題に「Crazy Growth」を掲げるゆえんだ。
2007年度の同社決算によると、地域ごとの売上では欧州が48%と最も多く、次いで東欧・中東・アフリカ地域(EEMEA)の25%、北米と南米を含むアメリカ地域が19%、日本をのぞくアジア太平洋地域の8%と続く。
同社は6月10日、イタリアのローマにローカルオフィスを設置。続く12日にもスペインとポルトガルをターゲットに据えたローカルオフィスをマドリードに設立している。強みを持つ欧州市場を、まずは押さえてしまいたい考えだ。
同じく2007年度の売上種目別では、コンシューマ向け製品が55%で最多。次いで企業向けの33%、技術提供の12%と続いている。
こうしてデータで見ると、同社の今後の課題が見えてくる。1つ目が急成長を支える人員の増強であり、2つ目が売上種目のバランスだ。
人員増強については現在も最も注力している分野であることが、Buyakin氏の講演からうかがえた。2008年度は、地域事業部門の人員、マーケティング、企業向けビジネスの人員などの人員を1.5倍程度増やす。特に研究開発を担うR&Dチームは、ほぼ倍増とも言える人員増を目指すという。
売上種目のバランスという点では、2010年までに企業向けビジネスをコンシューマビジネスと同程度まで成長させたい考えだ。特に強みを持つ欧州市場を皮切りに、苦戦が続く北米の企業向け市場においてはSMBに注力する。
ロシアを代表するIT企業のKaspersky Labが個人向けや企業向けといった区別なくグローバルで認知されるに至るか否かは、今後数年内に決まると言っても過言ではないだろう。