カスペルスキー会長が語る:ロシア市場、IPO、企業買収、業界再編 - (page 2)

冨田秀継(編集部)

2008-07-10 22:46

Kaspersky LabのCOOであるEvgeny Buyakin氏は、財務状況は良好だと話していた。今後、ポートフォリオや地域事業の拡大を目指して企業買収をする可能性はあるか?

 もちろん可能性はあるし、私たちには企業買収をするだけの体力がある。InfoWatchが企業買収に耐えうる体力があるかと言われれば、ほとんどないと答えるが、Kaspersky Labにはその能力がある。それは上場していなくても可能だ。

 その理由の筆頭としては、Kaspersky Labが多くの独自資産を保有している点が挙げられるだろう。また、キャッシュフローが潤沢なことから、他の企業に資金を投下することもできる。投資銀行が望むのであれば、共同で投資してくこともできる。

 しかし、企業買収については一つ、重大な疑問がある。それは合併による組織の変容だ。

 私たちも企業買収をしたことがあるが、それは20人規模のごく小さなグループと製品を吸収したに過ぎない。しかし、この規模であっても、プロジェクトの吸収という点で私たちは非常に大きな問題に直面したことがある。

 その問題とは企業文化の違いだ。私たちは会社のスピリットを変えることなく、吸収した従業員の文化を変化させなければならなかった。これは非常に難しい仕事だといえる。

 巨大ベンダーを見てみると良い。企業買収をしても、彼らには獲得した人員、資産、製品を組織にしっかり吸収するだけの時間もないだろう。この問題は現在進行形だ。彼らはあまりに多くの企業を買収した挙げ句、組織を管理できない状況に陥っている。

セキュリティ企業がITインフラ企業に変容したり、あるいは逆にITサービス企業がセキュリティ事業を手がけるようにもなった。セキュリティ専業ベンダーは生き残れないと発言したベンダートップもいるが、あなたはどう思うか。

Natalya Kaspersky氏 Natalya Kaspersky氏

 答えはもちろん「ノー」だ。

 一例を挙げよう。企業向けのセキュリティ市場において、巨大ベンダーは市場シェアを落としている。と言うことは、どこかの企業がその分を占有したことになるが、それはビッグプレイヤーではないのだ。

 なぜなら、巨大ベンダーが顧客にむかって「我々は全てを提供できます」と言っても、顧客はインフラ全てを一社に任せるようなことはしない。情報セキュリティやリスクマネジメントの観点から言えば、これは当然のことだ。

 二つの異なる市場アプローチがあると考えれば良い。一つは巨大ベンダーに任せるやり方で、もう一方がニッチプレイヤーだ。

 ニッチプレイヤーは市場で生き残ることができる。それどころか、その分野のリーダーになることもできる。Kaspersky Labが良い例だ。

 我々は当初、スクラッチでセキュリティソフトを開発していたが、今ではコンシューマ市場で四番手だ。(創業者でCEOの)Eugeneもこれを大きな成功だと考えている。我々はどこからも融資を受けずに、ここまで成長したのだ。

 我々は一つの分野に集中する。別の分野に進出する時には、InfoWatchのように新たなブランドをスタートさせる。顧客は我々が全てを提供することを望んでいないからだ。「Kasperskyと言えばアンチウイルス」のように、明確なメッセージが求められている。

 「カスペルスキー=アンチウイルス」というアプローチは、一般の消費者の認知度向上という点でも有効だ。消費者に向けてブランドを集中させなければならない。

 InfoWatchはまだそれほど有名ではないが、明確なメッセージは既に持っている。「InfoWatchと言えばDLP」だ。Kasperskyのメッセージとはミックスせず、それぞれのブランドにフォーカスしなければならない。

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