もう、経営はITを無視できない
例えばコンピュータメーカーのDellを見てみましょう。DellはDell Direct Modelと呼ばれるサプライチェーンの仕組みを持っています。簡単に言えば、Dellは顧客からのオーダーを直接受け、世界中から最も条件の良い部品をリアルタイムで調達し直接販売しているのです。顧客のニーズに合ったカスタマイズ品をより安く、早く手元に届ける仕組みです。この仕組みはITなしでは実現できません。Dellの強さそのものであり戦略とITは切り離す事は不可能です。極端な事を言えばITのトラブル次第で生産はストップし、顧客に製品が届かなくなるのです。
また私の大好きなマクドナルドでは、MFY(Made For You)という調理プロセスとITが融合したシステムを2005年から導入しています。MFYでは、注文から高速でハンバーガーを完成させる事が可能になり、結果として作り置きの売れ残りによるコスト削減だけではなく、なにより作りたての美味しいハンバーガーの提供が可能になっています。
ご覧の通り、ITは単なる効率化のツールではなく、企業が提供するサービスや商品の質そのものにまで影響するのです。ITは分からないでは経営は出来ない時代になってきたのだと実感していただきたいと思います。
持つべきか、持たざるべきか
インターネットの時代になり、既存の事業範囲を超えた新しいタイプの企業、例えばGoogleやAmazonといったITそのものが強みの会社も出てきました。Amazonは、本やCD、DVDのみならず家電、玩具、コンピュータからオーディオと商品ラインナップの幅をどんどん拡張しています。ここで注目していただきたいのは、GoogleやAmazonが自社を支えるITインフラを外部に開放し、新たなビジネスを展開し始めている点です。
Amazonは、インターネット上でビジネスを展開するIT時代ならではの企業です。まず、ビジネスの要求に応じて新しい技術を最大限に活用し、顧客を掴む必要があります。さらに、面白いだけではなく高い信頼性もなければインターネット上でのビジネスは成立しません。新規サービスの導入に即座に応えられるIT、新しいIT技術を積極的に活用したビジネス展開、誰もが安心して商品を購入できる高い信頼性のIT、さらにどんなPCやネットワーク環境でも快適に商品を閲覧できるIT――これらすべてを必要とする、ITなしには成功しえない企業の代表でしょう。
それでは新しくインターネットビジネスに参入する企業が、AmazonレベルのITインフラを持つ事は可能でしょうか?