使い続けるのか、乗り換えるのか
2008年7月15日に開催されたIBMによるイベント「Lotus Day 2008」において、ノーツコンソーシアムのメンバー代表と日本IBMのコメンテーターによるパネルディスカッションが行われた。そこでは、現在のNotesユーザーの率直な声を聞くことができた。
例えば、TDKの場合、現在利用しているR6のサポート切れの問題があり、Notes/Domino 8への移行を検討中だという。また、現状利用しているR6では、Windows Vista上での利用においていくつかの問題がある点も不安要因という。ノーツコンソーシアムの会員でもあるTDKの担当者は、「アップグレードする明確なメリットが見えにくい。移行にあたってネガティブな理由しか見つからない」と手厳しい。
新OSへの対応やサポート切れといった理由だけでは、経営層に対してNotes/Dominoのアップグレードを正当化するのは難しいようだ。IBM Lotusがアピールする新バージョンでの新機能が、必ずしもユーザーにとって魅力的な機能であるとは限らないといったこともある。アップグレードの費用対効果をどこで判断すべきか、ユーザーは悩んでいる。
また、日軽情報システムでは、いまだにR5を使い続けているという。R5はサポート切れから既に4年が経つが、Notes/Domino独特の作法さえ管理運用側が押さえていれば、「まだまだ使いものになる」という。IBM Lotusに対しては「(以前のバージョンを)ずっと使い続けるために、何らかのサービス提供があれば」とも要望する。しかし、サポート期間の延長についてIBMは、「新しい技術の進展より現状技術の維持を優先すべきなのか」とつれない。
もちろん、Notes/Dominoから他の製品へ移行するという選択肢も考えられる。ただし、これまでNotesでアプリケーションを開発し、業務で利用している数千のデータベースを持ち、膨大な文書をNotes上に蓄積しているユーザーであれば、この移行は当然、大がかりなプロジェクトになるという覚悟が必要だ。
いずれにせよ、現在のNotesユーザーは今後、サポート切れのNotes/Dominoを使い続けるのか、最新版にアップグレードするのか、それとも他社のコラボレーション基盤に乗り換えるのかの選択を迫られる。そのいずれを選択するにしても、蓄積した過去のデータやアプリケーションといった資産の継承をどうするかについては考えざるを得ない。
自社が今後も継承していくべき資産には何があるのか。そして、選択に伴って発生するコストの費用対効果をどう考えるか。これらを整理するだけでも骨が折れる作業であることには間違いないが、それは必須事項と言ってもいいだろう。今だからこそ、自社のコラボレーション基盤の全体最適について、時間をかけて取り組むべきなのではないだろうか。