JavaScriptは、当初は小規模だったが、現在では、多くのすばらしいインタラクティブなウェブサイトの言語、そして「Ajax」と呼ばれるテクノロジを使うリッチウェブアプリケーションの基盤となるテクノロジに成長している。しかし、多くのアプリケーションにとって、JavaScriptの機能は十分でない。Picnikのオンライン写真編集ツールでAdobeの「Flash」が使われ、Microsoftが「Silverlight」と呼ばれる自社のテクノロジを推進しているのはそのためだ。
しかし、Google、Yahooなど、さまざまなサイトがJavaScriptを支持しており、JavaScriptの高速化は、「Google Docs」のような最先端のアプリケーションだけでなく、無数のウェブサイトにとって後押しになる。JavaScriptの性能の高速化は、Mozillaが「Firefox 3.1」で登場した「TraceMonkey」プロジェクトについて熱心に語る理由や、WebKitのプログラマーが「SquirrelFish」プロジェクトに一生懸命に取り組んでいる理由、Microsoftが近い将来登場するInternet Explorer 8に人々を移行させようと熱心になっている理由の1つだ。
イベントでGoogleが示したJavaScriptのスピードテストでは、ChromeはMicrosoftの現行ブラウザであるInternet Explorer 7を完全に打ち負かしたが、わたしは記者会見のデモから結論を引き出すことには慎重だ。しかし、Googleのエンジニアで、V8の技術リーダーを務めたLars Bak氏は、このテクノロジに自信を持っていた。
Bak氏は具体的な数字を公表しなかったが、ChromeはInternet Explorer 7よりも「何倍も高速」だと述べた。しかし、現行のFirefox、TraceMonkeyを搭載した未来のFirefoxと比較してはどうなのだろうか。「何倍も高速だ。保証する」(Bak氏)
もちろん、Bak氏の主張は、V8ウェブサイトで公開されている、Google自身のJavaScriptのベンチマークに基づいている。しかし、一見したところ、1万1000行のコードを使ったテストはひどくゆがめられたものとはいえない。
ウェブ開発者にとって新しい展望になるか
JavaScriptが高速化すれば、アプリケーションも高速化できるだけでなく、プログラマーもウェブアプリケーションの限界を推し進めることができる。Bak氏は、「より多くのコードをブラウザに組み込むことができ、ウェブアプリケーションの開発者の創造性を広げることになる」と述べた。
また、Googleの製品管理担当バイスプレジデントであるSundar Pichai氏はその可能性に期待していた。
「ほとんどの開発者がJavaScriptを多用しない理由は、JavaScriptが高速でないからだ。(V8により)まったく新しい未来のアプリケーションが実現されるだろう」(Pichai氏)
しかし、Googleの構想の最大の障害は、インターネットが、技術革新のエンジンとなるのと同じくらい、アンカーとなってそれを留めているということだ。Firefoxはかなり市場に浸透し、多くのネット愛好家たちの情熱に火を付けているが、それでもインターネットバブルが絶頂期だった2001年に投入されたInternet Explorer 6の市場シェアに遠く及ばない。
Googleの主張を聞いても、わたしは平均的なユーザーがすぐにChromeに移行するとは思えない。高速化されたブラウジングや、さまざまなユーザーインターフェース、セキュリティ、プライバシー、検索機能は便利だが、ほとんどの人たちにとって、わざわざ新しいブラウザをダウンロード、インストールしようと思わせるほどではない。
しかし、たとえChromeが宣伝の域を超えなかったとしても、Googleの宣伝力を軽視すべきではない。Googleには、テクノロジの基本方針を設定する多大な力がある。そして、Googleが高速化されたInternet Explorerを成功と見なそうとする限り、Chromeプロジェクトは成功のように見える。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ